南砺の病院家庭医が勉強記録を始めました。An archive of medical articles summarized by a family physician from Nanto Municipal Hospital.

An archive of medical articles summarized by a family physician from Nanto Municipal Hospital.富山県にある総合病院で働く病院家庭医です。勉強の記録を少しずつ書いていきます。

RCGP英国家庭医療学会の年次総会2019にまる3日間行った気分になるお話

2019年10月24日から26日にかけてRCGP英国家庭医療学会の年次総会2019がイギリスのリバプールで開催されていました。私はもちろん行っていません。

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Twitterで#RCGPAC とつけておけば会場の雰囲気がわかるので、田舎で医者をしていると、当直明けにこういうのを見て海外に行った気分になってしまうのです。便利な世の中になりました。

An evolving summary of #RCGPAC conference, Liverpool, 24 to 26 October 2019 (updated each day) - Wakelet

ここへ飛べば、参加者による膨大なTweetが見られるのですが

このブログに埋め込んだら大変な事になったのでリンクだけで勘弁してください。

 

基調講演も大変面白かったです。行ってないですが、全部観れます。

Keynote speaker videos 2019 | RCGP Annual Conference & Exhibition

マイケルマーモット先生の「社会正義、健康の公平性および健康の社会的決定要因」は非常にエビデンスもまとまっていました。

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 このスライド、Twitterで拡散しています。

 

学会中のTweet内容の分析もされています

rcgpacまたはrcgpac19またはrcgpac2019 Twitter NodeXL SNA Map and Report for Friday、25 October 2019 at 08ですが、これは非常にわかりにくい。

なら紹介するなよという話ですが…学会のアクティブさがなんとなく伝わればと思い紹介しました。

 

まずは、演題からイギリスの家庭医療のトピックスをまとめてみましょう。

Programme 2019 Day 1 | RCGP Annual Conference & Exhibition

・プライマリケアのためのHRTのシンプルで安全な処方

・プライマリケアの近代化-英国全土でのサービスの変革

・ブログ、ポッドキャスト、ソーシャルメディアを通じて一般的なプラクティスを擁護

・次世代GP:新世代のプライマリケアリーダー

・評価を医師や患者に価値があり楽しみにしているものにするには

・デジタル医療システムを現実のものにする

・アカデミックGPのキャリア

・子どもの保護

・英国からの卓越性の例

・一般診療における新しい役割と新たな役割(作業療法士、リンクワーカー、社会的処方者、高度な臨床開業医など、英国全体の一般診療における主要な新たな役割から生じる課題)

・脆弱な患者との診療(エビデンスベースから実際の診療まで)

・GPトレーニングでのVRによる没入型シミュレーション学習

・AIは今後5年以内に患者に力を与える健康への新しいアプローチをサポートしますか?

・一般的なプラクティスを発見する あなたはどんなタイプのGPですか?

・NPによる基本的な生活支援

・ストリートメディック:プライマリケアアウトリーチ環境における医学生のための革新的な学習機会

・Learning Together Together Care-Better –包括的老年性評価

・教育における芸術の革新的な使用、多様性とプロフェッショナリズムについて考える

・プライマリケアにおける患者の需要に対する天候の変動、スポーツイベント、および健康メディアの影響

・ヘルスエクスペリエンス(HEAR) :ウェールズ全域の調査結果と推奨事項

・魅力的なピアグループを作る方法

・学習障害のある大人と働くためのコミュニケーションスキルトレーニング

・若者がソーシャルメディアを使用していることを理解する:私たち全員がデジタルデトックスを必要としていますか?

・レジリエンスのあるピアグループサポートによる品質改善

・新しいRCGPカリキュラムを使用して、GPトレーニングを通じて潜在能力を実現する

・職場で健康を維持するための5つの方法

・よりグリーンなプラクティス:患者と地球の健康を改善するための一般的なプラクティスの実施

・QOFなしでスコットランドでケアの質をどのように維持しましたか?

・リーダーシップを身に着けるには

・患者にとって重要なことは私にとって重要ですか?

・患者と理解を共有する-課題と新しいアプローチ

・サポートスタッフ、学生、研修生の精神的健康

・子どもと若者の健康:リバプールの深刻な暴力と搾取への対処

・プライマリケア環境での身体活動の社会的処方

・GPコンサルタント 孤立していませんか?

・ジェネレーションゲノムGeneration Genome:ゲノム医学のプライマリケアに備えるための教育の提供

・良い医者になるには何人の「いいね」が必要ですか?ソーシャルメディアがメンタルヘルスに与える影響を調査する

・安全な手術イニシアチブ:脆弱な移民のアクセスの改善

・一般診療における終末期ケアのためのQIツール

・究極のポートフォリオGPとの会話

・社会正義、健康の公平性および健康の社会的決定要因

・利益相反は潜在的な対立に対処するのに十分ですか?

・高齢者のメンタルヘルスに関する神話を払拭する

・あなたのアイデアを聞いてもらう方法 説得の技術

・アートがどのようにあなたの幸福に影響するか–すべてのレベルの経験のための実践セッション

・プライマリケアの品質改善:実用的なツール、テクニック、重要なヒント

・低閾値、高忠実度の一般診療:疎外された患者のアクセスの改善

 

診療の話題

・一般的な感染の迅速な更新:NICE / PHEガイドラインを日常業務に取り入れる

・統合ケアの現実–中程度の弱さを持つ人々のための積極的な識別と介入サービス

・Healthy Living:2型糖尿病患者の自己管理をサポートする新しいオンラインプラットフォーム

・アイルランドの一般診療時間外(GP-OOH)サービスにおける敗血症の早期診断

・知的障害のある人々の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の有病率

・倫理に関する実践関連カリキュラム

・がんの早期診断–腸がんと肺がんを中心に

・湿疹のある子供に対する検査指導食のアドバイスの価値は何ですか

・COPDの新しいGOLDおよびNICEガイドライン、新しい気管支拡張症ガイドライン、BTS SIGN喘息ガイドラインに基づいて呼吸器系の問題を持つ人々のケアを改善するための重要な臨床的ヒントとは

・GP集団の急性腹痛の評価におけるC反応性タンパク質検査の有用性

・湿疹のある子供に対する検査指導食のアドバイスの価値は何ですか

・プライマリケアでの直接経口抗凝固剤(DOAC)のモニタリングの監査

・VitB12検査の適応と結果の信頼できる監査について

・都市GP外科でのC型肝炎と診断された患者の管理

・プレガバリンの使用実態

・GPsのNHSイングランド苦情処理の管理におけるレジリエンスと、それを強化するために必要なサポート

・喘息およびCOPDの緊急吸入治療パックについて

・長期抗うつ薬から離脱する準備ができていると感じる患者の視点

・英国での電子健康記録データベースの範囲を拡大:CPRD Aurum研究

・CARer-AD在宅死亡患者の症状:英国の研究(CARiAD)

・2型糖尿病の肥満および過体重成人に教育減量介入:無作為化対照試験の体系的レビュー

・循環器の健康状態に関する意思決定

・Stroke南アジアのコミュニティの知識。彼らは「Act FAST」ですか?

 ・プライマリケアにおける統合てんかんサービスの開発

・一般開業医としての生活要求:探索的定性的インタビュー研究

・スポット診断:皮膚病変および炎症性皮膚病

・眼科の簡素化:評価、一般的な問題、一般的な落とし穴

 

スポンサーシンポジウムも参考までに

・ウェブサイドマナー:デジタル時代にケアを提供する方法に関するレッスン

・「あなたにとって重要なこと」GPの募集と定着に対するスコットランドのアプローチ

・「2型糖尿病患者のGLP1-RA治療開始時期はいつですか」

・生活を改善し、お金を節約する栄養失調

・PSA:Best Practice

・月経出血(HMB)のある女性をどのように最も良く支援できるか

・静脈性湿疹の診断と管理

・抗菌薬管理の時代におけるにきび管理

 

なぜ、テーマを先に見たのかというと、適当にTweetばかり見ていても、全体像がつかめないのです。学会に行けないくせに楽しみたいという私のようなケチな人間は、プログラムの題目をさらさらっと見て、今年のTweetの中でも面白そうな話題と重要そうな話題を網羅的にピックアップします。

 

ここからは個人的な紹介です。 

 

①日本のプライマリケアの現状を発表されていた。

International Perspectives: Insights into primary care in Japan

国際的な視点:日本のプライマリケアへの洞察というタイトルで、英国と日本の間で確立された会議交換プログラムの一環として、日本のプライマリケアの実践例について3人の日本人医師からプレゼンテーションがありました。プライマリケアの新たな新しいシステムとして、このセッションは、プライマリケアシステムを比較対照し、学習を促進する刺激的な機会を提供します。とあります。

画像 大病院志向でフリーアクセスであるということが、イギリスの医療から見てどうなのか興味深いです。

 

②PACTという忙しいGPは研究のアイデアをサポートするシステムの紹介


PACT GP Explainer Video

 

③患者のエンパワメントについて

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患者のエンパワメント、すなわち健康に関する意思決定を行う際に患者に力を与えるには利益、リスク、代替案、その他が必要

 

④VRゴーグルかぶっている人発見

 NHSに慣れていないGPと患者を疑似体験できる映像らしい。どんなだろう。遠いとか、言葉通じないとかそんな感じだろうか。

 

⑤社会的処方の実践ネタ

社会的処方が機能するために必要な事

1.臨床医/患者のためのエビデンスをまとめる

2.処方データ(および結果)をまとめる

3.日常的に収集された電子カルテのデータを使用して、低コストで結果を出すために日常診療に組み込まれた実用的なRCTを組む

 

⑥薬剤師と看護師は高く評価されている

 

⑦ GP自身のメンタリングのため、2か月ごとにカウンセラーを雇う

自分自身のメンタリングのため…考えたことがない発想でした。 

 

⑧時代遅れのITがプライマリケアの生産性と有効性を妨げています。統合された情報が必要だと主張されています。

NHSに対する問題提起がとにかく目立ちました。あえて取り上げませんでしたが、古い体制を何とかしたいという想いがあるのでしょう。 

 

⑨かの有名なThe Inner Consultationの著者Roger Neighbour 博士が

Zen and the art of Leadershipというタイトルで講演されていた。

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なんというか…懐かしい感じのスライドだ…。

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おぉ!生ロジャー!!(生じゃないけど)

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 ロジャーネイバーがリーダーシップを避ける理由らしい

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⑩LGBTに関する発表

それは重要であり、重要ではない。当たり前のようにとらえるべきということでしょう。

 

他にも「LGBTの健康をQIプロジェクトとして扱う」というスライドが紹介されています。

 

⑪患者さんへの最短診療時間は15分必要?

 コメントが荒れています。そんなに要らんやろという声が多いですが、必要な人はそのぐらいかかるという意味かなと思います。

 

 ⑫Value GPという単語が、なんかいいですね。

 GPが何に価値を置いているかというお話のようです。こういうのを話し合うのって、燃え尽きないためにも必要だと思います。

 

⑬長時間GPの診療をすると

 より長いGPの診療をすると…

  • 専門家のジェネラリストのケアを有効にします
  • 正確なメンタルヘルス診断を向上します
  • いくつかの慢性疾患のための入院を減らします
  • 過剰検査をしなくなります
  • 患者のQOLと有効化が向上するかも
  • GPのバーンアウトが減ります

これだけでもへーっという感じです。

 

⑭すべてのGPが社会的処方をすべきかという質問

 こういう質問をするのは、別にやりたくないから言っているわけではないのでしょうね。本当に医師がすべきことなのかを考えることも時には大事です。

 

⑮RCGPフェローオブザイヤー2019

アイルランドの一般診療時間外(GP-OOH)サービスにおける敗血症の早期診断

 ポスター全然見えないですが、GP-OOHでググれば概要は分かります。

GP Out of Hours Service

つまり、次回の手術が始まるまで安全に待てない緊急の医療問題に必要な評価、アドバイス、治療を提供するサービスの事です。そこで早くバイタルサインを聴くことの重要性を示しています。

 

⑯ヘレン・ストークス・ランパード教授の基調講演のプレゼンにビクっとする

詳しくは動画をご覧下さい。

 

⑰学会に何を持っていこう。

ブログには学会に持ち込んだ方がいいものを紹介しています。

Podcastのテーマも本当に面白い。

 

⑱SEAってポスター発表になるんですね。

 タイトルとJpanne Reeve先生のリツイートという点で採用。

 

⑲GP教育は大学によってピンキリ

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GP募集が少なかった下位2校の医学部が試験で最高の結果を出すのはなぜ?

下位2校、嬉しかっただろうな…。

 

⑳ジェネレーションゲノムGeneration Genome:ゲノム医学のプライマリケアに備えるための教育の提供 

 遺伝子検査について。日本でも自宅で検査キットを使って調べる方はいますよね。偽陽性と偽陰性の解釈についてどう伝えるかが取り上げられていたようです。

 

㉑ドロシーのアジェンダ 

ドロシーのアジェンダに注意を払わないと、彼女はおそらく私たちの言うことを聞かないでしょう。共有されたアジェンダについて彼女と会話をすることが重要です。

これは見事にかみ合っていないスライドですが、こういうケースをメタ認知できると外来がスムーズになりそうです。

 

㉒COPDの治療をお勉強しています。

こういうのも学会出ている感じが出ていいですね。

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しっかり復習しておきましょう。

 

㉓優秀ポスター「家庭内暴力のリスクがある」患者のコーディング

医学生さんの発表のようです。

DVしそうな家庭を早期に見つけるためとはいえ、なかなかできる研究じゃないですね。すごい。

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いかがだったでしょうか。 

RCGPACに参加したこともないのに13000字の特派員レポートみたいなブログを書くという偉業を成し遂げてしまいました。今のイギリスのGPの興味のあるテーマが分かったと思います。

 

来年はグラスゴーらしいです。お楽しみに。(行けないけど)