JPCA学術大会(第14回)の抄録を読んで勉強した気になってみた。
お久しぶりにブログ更新しました。
あまり長い文書になると三日坊主になってしまうので,短く書いてみます。
5月12日〜14日に日本プライマリ・ケア連合学会学術大会があります。
愛知県豊田市・名古屋市で行われます。
SNSでは宣伝が飛び交っているので,大体の内容は分かっていると思います。
本ブログでは,私がどのように学会を楽しもうとしているのかを紹介したいと思います。(私が単に楽しみたいだけのメモだと思ってください)
全体像がこちら,1フロアで簡潔です。ポートメッセなごやです。
まず,日程表をみてみます。(私は5/13,14しか出ないので2日分だけ)
私のお仕事関連は
●ブース・展示(常設)
南砺市民病院 総合診療研修ポスター展示
医療とアートの学校 アートで「マルモカンファレンス」
5/13
①インタラクティブセッション3 現地
ナラティブで考える臨床倫理
②医療とアートの学校 パフォーマンス・ワークショップ
マルモカンファレンス×劇団アルクシアター
③教育講演
PCXコアシリーズ③ 褥瘡
④教育講演11 オンデマンド(現地)
プライマリ・ケアにおける押さえておきた い重要文献(第7弾)
5/14
①シンポジウム22 オンデマンド(現地)
慢性疾患×行動経済学〜ナッジを 実装したケアを考える〜
②インタラクティブセッション26 (現地)
マルチモビディティをバランスよく見るための妄想力を鍛えるカンファレンス(通称マルモカンファレンス)をやってみよう!
③教育講演20 オンデマンド(現地)
さまざまな視点から考える、実際どうな のSGLT2阻害薬!?
なかなか空き時間がない学会になりそうです。
普段の学会では参加していなかったのですが,医療とアートの学校で常設ブースと劇団とのコラボが個人的に楽しみです。ご興味あればぜひご参加ください。
私の学会スケジュールを確認して,準備の大変さに絶望しながら(あと8日)
現実逃避的に,抄録を読みながら勉強になったことをさらっと記述してみたいと思います(詳しくは抄録を御覧ください)
まずは日野原賞演題から 多疾患併存と書いてある演題が5個中3つもあることに驚き
・Complex Multimorbidity(CMM:疾患によるシステム障害数が3つ以上)に適切なケアとサポートが入ると機能障害の発生を遅らせて,健康長寿に貢献する可能性がある。
・日本では75歳以上の80%以上がケアの分断が起きている。85歳以上の高齢者ケアの分断は,総死亡率,ポリファーマシー,不適切処方,外来医療費の増加と関連。
・減薬の説明を聞いても元の薬を希望する高齢者の信念には,睡眠剤中止による不眠への不安,自分は転倒を起こすはずはない,健康性正論に基づく薬の役割(薬を飲むことで健康を自覚している)がある
・患者医師の信頼関係のモデルで社会学者ニコラスルーマンの信頼概念の枠組みを当てはめる(信頼とは自分が抱いている他者あるいは社会への期待をあてにすること)。患者の期待は寄り添ってほしい期待,適切な診断・治療の期待,自分の身体を任せたい期待,元から患者が抱く組織や医療への期待の4つがある。信頼することで不安を軽減し,複雑性を軽減する可能性がある。
・高齢者の社会参加は社会環境と主観的健康感に間接効果を及ぼす可能性がある。
こんな感じでかいつまんで抄録を読んでいきます。
続いては,一般演題(口演)
・COVID-19の死亡に関連する因子。CRP,LDH,Cr,リンパ球,血小板に注目
・コロナ禍で総合診療医が経験したことのエスノグラフィー
・コロナ禍で高血圧治療の集団に影響を与えなかった
・うつ病患者の半数は医療受診をしない。精神科以外に40%,精神科には10%しか受診しない。早期介入としてVR?
・オンラインでの患者医師の説明は急変時対応は少なかった。退院後の療養相談はオンラインのほうが多かった。
・モヌルピラビルはCOVID-19軽症者療養施設からの入院を減らさなかった。
・COVID-19によるメンタルヘルス悪化をリーフレットが減らす可能性。
・ACPの導入は年齢や病期に応じて行われる傾向があり,価値観や満足度を重視。
・COVID-19流行下での在宅看取りの増加はない。
・総合診療科の提出する病理検体は細胞診では尿が最多,組織診はS状結腸の生検
・高齢で介護度が高いと骨密度検査をされない傾向
・自宅看取りを希望された患者がPCU看取りになるのは,苦痛症状が関連
・LDL直接法よりnon HDL-Cの方が達成率が高く,管理目標にしやすい可能性。スタチン増量のみならずPCSK9阻害薬も積極的に導入が必要。
・医療費減免制度の利用患者は非利用者より初診後30日以内の死亡が多く,在宅での死亡がなかった。
・低所得層によい医療サービスには機能強化型の在宅支援診療所や訪問看護ステーション,介護老人福祉施設を増やすと良い。
・低栄養と歩行速度低下の自覚に相関。低栄養に至ると健康状態に関する満足度が低下
・サルコペニアでも食道がんに対してESDは可能だが周術期管理をより慎重に行う必要
・調理教室をしても重要度は上昇するが,自身度やセルフ・エフィカシーは上がらない
・地域包括ケア病棟で多職種による口腔ケアで入院中の肺炎発症数は減少したが,有意差はなかった。
・フレイルに末梢静脈栄養してもADLの回復を阻害する可能性
・SADA-5というPIMs評価ツールは減薬に有効であった。項目は利益の有無,害の有無,症状改善しているのに継続しているか,診断が曖昧なままの処方か,処方カスケードかの5項目。
・バルプロ酸はカルニチンの排泄促進と再吸収障害を起こし,カルニチン欠乏を招く可能性。傾眠,低血糖があれば注意。
・減薬に結びついている要因。嚥下障害,総合診療科の介入。
・呼吸器感染症に広域抗菌薬が処方されぎみ
・SDMとPCCの関連の検証。SDM技能の習得が行動変容を促す。
・NEAE(単一エピソードの好酸球性血管浮腫)は季節(9〜11月),マイコプラズマ感染が関与する可能性。
・医療過疎地に診療所を設置すると,患者の通院時間は短くなり,滞在時間の減少も見込める。
・PC医普及の課題は,制度,社会への価値,キャリア,診療の質,教育。
・外来患者の総合診療医の認知度は7割程度,ゲートウェイ機能のニーズが高い。
・生きててよかったと思うには,人格によって異なる因子がある。
・大病院を受診する患者のPXと受領行動の関連。近接性や協調性の向上で,主治医をバイパスしない紹介を促すと,結果として主治医によるゲートキーパー機能向上が期待。
・SjS患者の頭痛や意識変容では自己免疫性脳炎を鑑別に上げ,MRIだけでなく髄液IL-6を測定する。
・救急で平常時より血圧が20mmHg以上の上昇がないことが脳梗塞の可能性を下げる。
・虫垂炎の1/4が診断遅延。Generalistによる診断と関連。
・誤嚥性肺炎の生命予後と,GLIM基準による低栄養は関連。
・便秘エコーは有用。
・高度看護施設(Skilled nursing facility: SNF)導入しても予後に差はない。
・大学総合診療科初診外来の発熱の原因は,最多は感染症,感染症は肺炎、尿路感染症、髄膜炎、 感染性心内膜炎など、非感染性炎症性疾患はSAPHO症候群、RS3PE症 候群、成人Still病など、悪性疾患は血管内リンパ腫、ランゲルハンス組 織球症、急性白血病、その他は薬剤性
・大学病院の総合診療科は診断が不明確であったり診断する こと自体が難しい患者が大部分を占めていた。
・社会福祉専門職を在宅療養支援診療所に配置することで,地域の診療所のプレゼンスが高まる。
・訪問介護員はインスリンの管理や支援の必要性を感じる一方で,その不安もある。
・脳卒中リハの連携において,生活期のリハ職が自身の専門性を超えた視野の広がりを身につける必要がある。
・服薬支援の関する抄録は看護師によるもの,看護師と多職種が共同したものが過半数
・ベジチェック(主張からのカロテン量測定)の取り組みが地域住民の健康に寄与している可能性
・無料低額診療事業の認知が受診控えの解消には寄与していない。制度の周知だけでなく受診の障壁を取り除く必要。
・訪問看護師は血液透析の利用者にコメディカルへの調整役や意思決定支援で貢献
・医療機関ではACPに関わる情報提供の場が少ない
・多職種勉強会(医療職と介護職)の職種間でIPEの準備状態の違いはなく,看護師のみ多職種連携における専門性(非独善的態度)の経時的低下を認めた。医師・看護師間で顔の見える関係性の構築に差を認めた。
・家庭医療専門医のがんサバイバーのケアの実践は,知識・ 情報源と患者・がん専門医からの要望と関連している
・看取りのない死亡者の死因は同居有無, 死後経過時間では差がなく、発見場所と年齢では差異がみられた。孤独死,自宅外死亡ともに 年次的増加傾向にあるが、年齢,性別,死因を含めコロナ禍による明らかな影響はみられなかった。
・患者の専門医志向はあるのか(結果は当日)
・COVID流行後において、 根治可能な大腸癌の診断数の減少とともに、 進行癌の頻度が増加していることが 明らかになった。 COVID-19流行後に診断された大腸癌は流行前と比較して、死亡のハザード比が有意に増加した。
・COVID-19の流行後に薬剤耐性菌は明らかな増加傾向ではなかった
・e-consultを総合内科医が利用し、高い満足度を得ている。
・吸入器デバイスを適切に選択することで, 日本におけるGHG排出量を削減することができる.(pMDIからDPIへ。地球温暖化係数(GWP)が低い推進剤への置換)
・ケアプランの中で重要視している項目としては、 ケアマネジャーは、「利用者の意向」「家族の意向」を重要視しており、 逆に「認定審査会の意見」がもっとも低かった。 医師は、「利用者の意向」「サービス内容」を重要視している傾向にあった。
・若手医師が勤務する小規模病院や診療所において学位取得や研究継続可能な環境整備により、若手医師が僻地に定着する可能性がある
・ETC(救急電話相談)は都市部での利用が多かった
・内科専攻医のバーンアウト有病率に関する研究
・倫理審査のいらない研究デザイン(人を対象としない研究)の割合は10%,文献研究レビューや生態学的研究など。
・内科学会ことはじめの論文化率は17.2%,平均期間は12.8ヶ月
・ユマニチュードをベッドサイドで直接指導することで、研修を受けてい ない若手医師の理解が深まり、今後、病棟スタッフと患者について幅広い観点から協議することができる可能性
・薬局薬剤師のアサーティブな自己表現は、 必要な提案を医師に適切に行うための能力として重要である
・男性患者に比べ、 女性患者でLDL-C管理値の目標達成割合が低かった。また、患者と担当医師の性別が異なる場合にも目標達成割合が低かった。
・プライマリケア専門家による医療介入はHIVだけでなく、生活習慣病、感染症予防への適切で迅速な対応を可能とし、専門職の連携で高い受診継続率とヘルスメンテナンスの向上が実現できる。
・地域の診療所から病院の総合診療科外来に対しては、 精神・心身症と膠原病・自己免疫疾患のニーズが高い。
・HIV陽性者の一般的な合併症診療に関して、JPCA会員個人レベルで十分な受け入れの素地がある
・多くの医師は高齢者の自動車運転適性評価の重要性を認識していたが、適性評価に自信を持てずにいた。PC医にはガイドラインや制度の理解を深める教育と、警察と連携できる環境が必要。
・よりへき地で診療するプライマリ・ケア医はより幅広い診療を行っている
・ホスピタリストによる皮膚生検は、皮膚科医がいない医療機関において診断を提供する上で適切な代替手段となる可能性がある
・うつ病性障害と診断される患者のうち、 心理・精神が主訴の者は少なく、 全身症状や疼痛など身体症状を訴える患者が多かった
・Campylobacter腸炎における便Gram染色鏡検は高い特異度を示したが、特に医師による検査は感度が低かった。迅速抗原検査は高い感度・特異度を示し、プライマリケアの場でも有用である
・大学病院総合診療科の初診患者の約2割がMUSを訴えていた。 MUS患者は主訴数が多く、主訴の内容はしびれなどの神経症状が最も多かった。ほか消化器,筋骨格
・主な5つの上気道症状のうちインフルエンザの39%は 1つ以下であり、15%は5つとも認めない。
・舌苔の有無は急性虫垂炎診断に有用である
・低血糖による意識障害のある患者において、 薬剤性低血糖では、 非薬剤性と比較して収縮期血圧および拡張期血圧が高値となる。意識障害患者で血圧高値を呈した場合には、頭蓋内疾患以外に薬剤性低血糖も想起すべき。
・訪問看護師数が少ない自治体に比較して、 多い自治体は有意に自宅死の割合が増えていた。
・時間外救急往診サービスとの連携により仕事満足度やQOLの向上、疲労度の減少を認め、特に医師の精神的・肉体的負担やプライベートとの分離におけるメリット
・1年後の通院継続や自己中断率は先行研究と同程度であり、 プラ イマリ・ケア医がメンタルヘルス診療の担い手として地域内で一定の機能を果たせている
・転倒傷害予測モデル(入院時の年齢、性別、救 急搬送の有無、 紹介状の有無、 寝たきり度、 転倒既往の有無の6 項目)の紹介
・病院で死亡する非担癌高齢患者の食事量の軌跡。食事が半量以上安定して食べられる期間がある患者と、入院を通して十分な経口摂取が得られない患者がそれぞれおよそ半数ずつを占め、後者の入院期間はおよそ3週間弱であった。
・現場の医療者が,在宅医療に対して,やりがいや高度な専門性といったポジティブイメージを抱く一方,医学生はネガティブイメージを抱いて いた.,ロールモデル不足,業務イメージ払拭,先行き不透明による燃え尽きなどの問題に対処すれば,医学生のキャリア誘導にポジティブな変化
・「地域の視点とアプローチ」を学ぶ機会を提供することで、 医学 生と実習施設が漠然と認識していた地域の解像度が高くなり、人と地域との相互接続性を高めた。
・医師国家試験の臨床問題における診察・検査所見は、 実臨床での報告データよりも特に感度が高い傾向があった。
・地域医療実習および救急実習の自己評価を目的とした妥当性・ 信頼性の高いスケールの開発(Medical Professionalism Evaluation Scale)
・子育てをしている家庭医は、 医師の視点と親の視点を融合し、 体験が与えた影響を患者の理解に向けていた。
・医学生は、 学修すべき症候の多くを大学病院総合診療部門の臨床実習で経験する機会がある。学内で学修する機会が少ない学修項目は、 学外の実習で補われている可能性
・地域包括ケアを実践している診療所看護職の自発的な学習やチャレンジ精神の根底には、 地域で暮らす患者に寄り添う看護観が存在し、 学び合う仲間の存在が学習継続のモチベーションに働きかけていた
・家庭医療専門医が指導する地域医療研修で、 研修医の家族志向ケ アに関する学びが多い
・研修医が指導医のサポート下で主担当医として患者教育を行っ た場合も専門医と同等の血糖管理が可能であり、より強い患者理解度向上が期待できる。研修医面では、問題解決能力、コミュニケーション能力が向上する可能性がある。
・救急入院患者のフレイル有症率は25.2%と、 地域在住高齢者 17.2%より高く、 入院早期よりスクリーニングしフレイルへの対策介入 が必要と考えられた。特に運動項目・閉じこもり・うつ項目で該当者が多い。
・便秘症診断前の患者に対する生活指導は便秘によるQO 改善に寄与できる可能性
・妊婦の状況を把握する質問項目は妊婦の状況を可視化し評価する一助となる
・介護保険利用高齢者では、 要介護状態区分に係わらず多種類の薬剤が長期処方されていた。複数医療機関への受診行動はポリファーマシーの一因と思われる。訪問診療により多剤処方を整理できる。
・妊婦健診中やその前後に得られる情報よりも、その親の出生時に得られる情報の方が児の将来的な生活習慣病をはじめとした長期的な疾病リスクに関与している可能性
・運動器疾患及びスポーツ外傷となった当事者の体験は29に類型化され、 5つの時間軸ごとに特徴的な語りがあった。
・新型コロナの漢方診療では、 免疫細胞賦活効果をもつ葛根湯が感染初期患者の重症化を防いだのに対して、過剰な免疫応答を鎮める小青竜湯は症状を緩和し後遺症発生率を低下させるのに有効であった。
・3回目ワクチン接種後副反応は,1,2回目両方または1回目に副反応を生じた人や基礎疾患がある人,女性に多かった.局所副反応は1, 2回目いずれかに副反応を生じた人で多く,60歳以上,男性で少なかっ た. 全身副反応は1,2回目両方に副反応を生じた人や女性,40歳未満で多いことが示唆された.
口演だけで99演題もあり,途中で挫けそうになりました。
おかげでじっくり抄録が読めて,研究のトレンドがつかめました。
実はポスター発表は302演題(Research in Progress含む)もあり
International Sessionも15演題用意されています。
もちろん
学会ジョイントプログラム
大会長講演
シンポジウム
教育講演
インタラクティブセッション
インタレストグループ
など
さらにはオンデマンド限定セッションも42もあり,お腹いっぱいです。
ポスター紹介302演題は勉強になりそうなものだけ紹介します。
結局,7200字も書いてしまいました。。。