南砺の病院家庭医が勉強記録を始めました。An archive of medical articles summarized by a family physician from Nanto Municipal Hospital.

An archive of medical articles summarized by a family physician from Nanto Municipal Hospital.富山県にある総合病院で働く病院家庭医です。勉強の記録を少しずつ書いていきます。

【活動報告】学生・実務者・教育者がともに学び合う「マルチモビデティまいぴー」(2022.2.23)に参加しました

今日は多職種向けマルチモビディティカンファレンスの進化版を経験できました。

 

そもそも今月の週医学界新聞で

マルモに対して多職種介入研究をした混合型RCTを紹介しました。

マルモの介入効果に混合型RCTが有効かもしれないという結論で紹介したこともあります。

 

(以下引用)

2021年のカナダの研究で,看護師,栄養士,リハビリ職種などの専門家による「患者中心の多職種介入(Patient-Centered Interdisciplinary Care:PCIC)」を,プライマリ・ケア診療の場でマルモ患者に実践した混合型RCTが発表され,その有効性が示されました1)。動機付けアプローチと自己管理サポートを主体にした介入により,定量的には食事と運動に関する有意な改善(NNTは食事4,運動9)が見られ,質的研究においても患者の自己効力感の向上や自己管理の改善につながっていました。

(中略)

多職種チームで介入するきっかけとして,マルモカンファレンスが活用できるかもしれません。共通言語として,本連載で紹介してきたプロブレムリストやバランスモデル,四則演算などのコンセプトを理解した上で,各職種の言葉でどの部分に強く,どのようなこだわりがあるのかを相互に理解し合うことができれば,マルモをテーマにしたIPEも進めやすいでしょう。実際に筆者の友人が運営する「あいまいぴー」という多職種連携教育の勉強会でマルモ事例を扱っていますが,各職種で症例に対する着眼点が異なることについて徐々に理解を深め,お互いの専門性を尊重するプロセスを四則演算の形で表現できるようになったそうです

(引用ここまで)

 

まだこの週刊医学界新聞の連載が始まる前に,この論文の著者であるMoira Stewart先生と会ったことがあります。

写真の説明はありません。

この翻訳にもほんの一部関わっていますが,この本の構成はとても素晴らしく,患者中心の医療の方法という概念を体系化した内容は,マルモの連載にもかなり影響を受けています。そんなご縁があります。

 

また,このRCTはカナダの研究ですが,カナダで多職種連携を行っているPariser Pauline 先生とも会ったことがあります。

 

彼女はThe Department of Family & Community Medicine at the University of Torontoで准教授をされてまして,私がトロント大学に家庭医療の短期研修に行ったときに非常にお世話になった先生です.英語能力もコミュニケーション能力も低い私に優しく声をかけて会話をリードしてくださり,食事をふるまって下さったりと楽しい研修になりました.楽しく研修できたのはPauline先生のおかげであったと言っても過言ではありません.

 

思い出の一枚(写真右手前がポーリン先生)

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詳細はこのブログで紹介しました。IMPACT Plusというチームの活動もおそらくマルモに有効であるという結果が出るかもしれません。

 

 

そんなわけで,このチーム介入がマルモに有効であったということは私にとっても運命的なものを感じました。多職種連携こそマルモ対策に必須の柱ではないかと感じたのです。

 

そんな時に,また運命的な出会いをします。

 

まいぷるとは,MAIPLEの呼び名でMAIPLE:More Amazing InterProfessional Learning & Educationの略であります。

 

このまいぷる代表の大村裕佳子さんとは,学生時代からの友人で,ちょうど「なんか一緒にやりたいね」と言っていた時にこの企画が誕生したのです。

 

名付けて,マルチモビデティまいぴー(マルまいぴー)

 

多職種連携教育のノウハウを蓄積しているまいぷると,マルモを深めている私がコラボすることで,どんな化学反応が生まれるのか大変楽しみでした。

 

準備の段階から多くのスタッフで勉強会を作り上げていく様子は大変楽しそうで,それでいて私のマルモの考え方を寸劇やブレイクアウトルームでのワークで学んでいく仕掛けを作り出す様子は圧巻でした。

 

今回の勉強会を通じた感想は

①医者の目から見たマルモは偏っていた

総合診療医はバランス良く物事を見ていると思っていました。ところが,医者という時点で,「複雑な問題をいかに単純化して解をシンプルにするか」という考え方に取り憑かれていたのかもしれません。複雑なものは複雑なものとして捉え,解が色々あっても良いのではないかと思っているはずなのですが,医学的な視点での医者の頭だけで考えていたのです。多職種連携を実践しているはずなのに,リーダーシップを発揮しているうちにいつの間にかフラットな意見交換になっていないことに気付かされたのです。マルまいぴーは,最初っからフラットな関係性で意見を出し合うことが原則だったので,そこから生まれた化学反応をダイレクトに実感できました。職場のリーダーシップのとり方も変わりそうですし,南砺マルモカンファレンスの運営方法にも変化が生まれそうです。

 

②多職種にレクチャーすることの難しさ

医療者に向けたレクチャーは色々しているはずでしたが,じっくり理解して勉強会を組み立てるまいぷるのスタッフへのレクチャーは,その反応がダイレクトに返ってくるので,共通言語の異なる多職種へのレクチャーを難しさを実感しました。特に「医学用語が難しい」「新しい単語が多くて置いていかれる」という感想は今までやってきたレクチャーもきちんと理解されていたのかを反省させられました。一方で,それをどうやったら理解してもらえるかという視点でスライドを練り直したり,医学用語を排除するマルモカンファレンスの誕生のきっかけになったように思います。

 

③大人数でやることの難しさと達成感は半端ない

個人的には,大所帯での勉強会の計画は久しぶりでした。自分ひとりで計画する場合,全体像の把握も,資料作成も簡単・短時間で終わるのです。実際,1人での講演のスライドづくりや勉強会のデザインも1日以上かかったことがありませんでした(つまり前日でも何とかなる)。ところが,皆で分担しながらやると,一見すると作業の分担ができて楽そうに見えて,進捗状況の把握や意思統一に時間がかかり,とても大変です。一方で,勉強会の規模も大きくでき,学習者の満足度も高めることができ,なにより,終わった後の達成感も感じることができるのです。

(余談ですが,勉強会の準備段階でもSNSの繋がりが増えましたし,終わった後にも新たな繋がりができました)

 

まさに多職種がフラットに学ぶ空間でマルモを学ぶことで,マルモの介入方法も開発され,広く浸透することにもなり,多職種の知り合いも増えるのです。

 

そんな素敵なマルまいぴーは第2段があります。(宣伝)

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当院で実施している南砺マルモカンファをLIVEでお見せするという企画です。

ぜひ多くの方にご参加いただきたく思います。