南砺の病院家庭医が勉強記録を始めました。

富山県にある総合病院で働く病院家庭医です。勉強の記録を少しずつ書いていきます。

Mモード超音波を用いた老人性嚥下障害の診断:舌の動きのパターンの変化

Presbyphagia Diagnostics Using M-Mode Ultrasound: Changes in the Tongue Movement Pattern

Nienstedt JC; Dysphagia. 2019 Nov 19. doi: 10.1007/s00455-019-10076-z

 

タイトルで「また、やったな」と思われた方もいるかもしれません。

 

一時、嚥下とエコーのブームに乗っかって

整形エコー書いたり 

嚥下エコー書いたり

こんなの書いて

職場のSTに「こんなブログあるんだけど」 みたいな感じで紹介して、「これすごいブログですね、エコーやってみたいです」と反応してもらって院内で嚥下エコー使い始めても怒られない準備を進めているのですが

 

若林先生のTwitterに興味深い論文が紹介されていました。

 この論文もまとめた方が良い、という神の思し召しと解釈いたしました。

 

ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターの
臨床神経科学センター言語聴覚障害領域での研究です。

 

要約

嚥下行為の加齢に伴う生理学的変化は、特に口腔期と舌の機能を損ないます。これは、食塊の形成と移行に非常に重要です。現時点では、嚥下のこの段階の測定を簡単に適用できる方法はありません。この研究は、Mモード超音波による嚥下困難な舌の動きを調査し、さまざまな年齢層の収集されたパラメーターを比較するために設計されました。この探索的前向き研究では、20人の若い女性と30人の年配の女性の舌とその動きを、BモードおよびMモード超音波による嚥下中に調べました。既存の嚥下障害または栄養失調、ならびに精神的または神経学的欠損は、Mini Nutritional Assessment-Short Form(MNA-SF)、Gugging Swallowing Screen(GUSS)、Mini-Mental State Examination(MMSE)、Barthel Indexによる臨床検査およびスクリーニングにより除外されました。データを互いに比較し、統計的に分析しました。年齢が上がると、舌の動きのパターンの変化が明らかになります。年配の女性のグループでは、若い女性のグループよりも垂直方向の舌運動の振幅が小さく(p <0.001)、最大振幅までの時間が短かった(p <0.03)。ただし、舌の直径に違いはありませんでした(p> 0.4)舌の動きのパターンは、解剖学とは対照的に、年齢特有の変化を受けやすいようです。Mモード超音波検査の使用は、嚥下の口腔段階を評価するための簡単で、放射線を使わず、費用対効果の高い方法です。限界は、超音波所見の広く分散した所見です。評価し信頼性のある標準的基準のためにさらなる研究が必要です。

 

Keywords
M-mode ultrasound、Dysphagia、Swallowing、Age、Tongue movement、Deglutition disorder

 

前書き
年齢の増加に伴い、「一次老人性嚥下障害primary presbyphagia(老嚥)」と呼ばれる嚥下行為が見られます。サルコペニア、結合組織構造のリモデリング、嚥下反射トリガーゾーンの変位、集中治療により嚥下機能がより困難になります。特に、口腔期は、通過時間の延長、食塊形成の制限、嚥下量の減少を認めます。この段階では、舌が食塊の形成と送り込みの重要な役割を担っています。異常な舌機能は口腔および咽頭の嚥下障害に関連します。嚥下の経口相の評価は依然として課題です。嚥下評価のゴールドスタンダードの方法、嚥下の光ファイバー内視鏡評価(FEES)、ビデオ蛍光透視法(VFSS)には制限があります。 FEESでは、口腔相の評価は実際には不可能であり、VFSSは複雑であり、患者の良好な協力が必要です。

 

超音波検査による嚥下機能の検査は1983年にShawkerらによって最初に記述されました。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6417184 PMID: 6417184)それは嚥下中の舌の動きを調査したBモード(brightness mode輝度モード)超音波検査でした。方法論の進化や技術革新が進み、定性的から定量的評価までの超音波検査ができ、嚥下の動的な側面の舌の収縮と位置の変化を表すため舌表面のMモード(モーションモード)超音波では、心エコー検査や血管診断、パルスが素早く連続して放出されることにより測定されます。反射を生み出す臓器の境界としてプローブに対して移動します。これを使用して、中咽頭領域におけるMモード超音波検査で特に歯科矯正学および歯科における舌機能の評価特定の臓器構造の検査に焦点を当てた診断の研究はほんの少ししかありません。


この研究の目的は、若年および高齢者の口腔期における舌の動きをMモード超音波を使いて収集されたパラメーターについて調査することです。

 

方法
標準プロトコルの承認、登録と被験者の同意
この探索的で前向きなパイロット研究は、ハンブルクカトリックマリエン大学病院医学部の嚥下障害センター主導でハンブルク-エッペンドルフセンターにおいて2015年6月1日から2016年5月13日の間に行われました。研究は地元の倫理委員会によって承認されました。


ハンブルクカトリックマリエン病院のリハビリテーションユニットに滞在してから4日以内で主観的な嚥下障害のない合計30人の女性高齢患者(63〜92歳:平均75.7歳)と20歳以下のこれに参加することに同意したコントロールとしての女性ボランティアによる調査です。 比較のために、女性のみが含まれています。嚥下における性別の違いとしてのこの研究と舌の機能は、最近公開された研究で既に示されています。最初に定義された除外基準は、主観的または臨床的嚥下障害、栄養失調または嚥下障害に伴う随伴疾患、重度の神経障害、例えばパーキンソン病または脳卒中の既往、抗精神病薬、頭蓋内疾患、腫瘍、著しい栄養失調、認知障害、深刻な介助の必要性があるものです。

 

評価
すべての検査は老年医学の専門家と神経学者(AR)と言語療法士によって行われました。最初に神経学者によって神経疾患または精神疾患および健康上の制限または主観的な嚥下障害がないか除外するために検査が行われました。すべての患者がGugging Swallowing Screen(GUSS)という脳卒中で検証された嚥下機能のスクリーニング検査が行われました。栄養状態の評価は、1994年に公開されたMini Nutritional Assessment(MNA-SF)が使用されました。これは最も有効で最も頻繁に使用される高齢者の栄養スクリーニングツールです。認知機能はMini-Mental State Examination (MMSE) によって評価され、ADLはBarthel Indexで測定されました。

この研究の適応基準は、GUSSスコア= 20、MNA-SFスコア> 10、MMSEスコア> 26、Barthel Indexが60を超えている方でした。
若年および高齢者の参加者の舌の動きを心エコー検査用超音波検査で実施されました。顎二腹筋間の正中矢状面でフランクフルト平面位で測定されました。

「舌骨、 オトガイ舌筋、オトガイ舌骨筋、顎舌骨筋」の画像検索結果

「フランクフルト水平面」の画像検索結果
舌の直径はBモードで測定されました(図1a)。 Mモードでは直立姿勢での(i)空嚥下(ii)15 ml(iii)30 mlの水を飲み込むときの舌の動きを定性的に検査されました。(図1b)。参加者は嚥下の前に口の中に水を含んで保持してから嚥下するよう依頼されました。

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figAはBモード、figBはMモード

Bモードでは舌の解剖学的評価で、Mモードは15mlの水を飲んだ時の舌の動きです。

HBはHyoid bone舌骨、TSはtongue surface 舌表面、GGはgenioglossus muscleオトガイ舌筋、GHはgeniohyoid muscleオトガイ舌骨筋、MHはmylohyoid muscle顎舌骨筋です。

 

統計分析
データは仮名化され、舌の直径と舌の動きの範囲、平均値の差についてt検定を使用しました。舌の直径と嚥下の所見は臨床パラメーターとの相関はピアソン相関係数が決定されました。


結果
被験者の一般的な特徴(表1)は
合計50人の女性被験者のうち、20は若年グループで、30は高齢グループでした。平均年齢は若年グループで37.4±8.2歳で高齢グループで75.7±7.8歳でした。

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Bモード超音波検査
Bモード超音波検査では、若年と高齢者の舌の直径には違いはなく(p> 0.4)。また、振幅と垂直方向の舌の動きも変わらなかった。

Mモード超音波検査
水飲み込み
一方で、水飲みテストでは若年と高齢のMモードの動きで非常に大きな違いがありました。(表1)

年齢が上がると、舌の縦の動きが小さな嚥下でも大きな嚥下でも小さい振幅であった(15および30 ml、p <0.001)。そして、舌の動きの最大振幅は、高齢の女性のグループで短かった(それぞれp <0.004と<0.03;図2)

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図2 30mlの水分を嚥下した若年(青色)と高齢者(赤色)の垂直の舌運動

臨床パラメーター間の関連およびMモードの結果
若い女性では舌の直径とBMIの相関も上腕とふくらはぎの周囲と相関が見られた。一方で年配の女性のグループでは30ml嚥下時の舌の垂直運動の振幅が舌の直径と相関がありました(表1)。

 

討論
この研究の結果は、舌の動きのパターンは年齢の増加とともに発生します。高齢女性では縦の舌の動きは振幅がより小さかったです。これはMモード超音波検査を使用した以前の研究で、Li先生も嚥下関連舌運動の減少が観察されていました。それに加えて、上下方向の舌の速度低下と不規則なリズムがあることが超音波検査で証明されました。それが年齢と関連していることを超音波の舌骨の嚥下運動パターンでも報告されていました。

加齢に伴う舌筋の喪失の予想とは反対に、舌の直径は変化はなく、高齢者でもBMIでも舌の直径とは関係がありませんでした。これは筋繊維の脂肪比率の増加によって説明されるかもしれません。Lang先生はすでに
筋肉の消耗は高齢者で過小評価される可能性があると指摘し、骨格筋の極端な減少と、筋肉量と強度の低下は当然、サルコペニアとして特定されます。

 

驚くべきことに、最大振幅までの時間は高齢者のグループでは舌の動きが短かった(図2)。筋肉繊維の代償のより速い応答が高齢者にはある可能性があり、さらなる調査が必要です。加齢に伴う骨格筋繊維の組成は議論の余地があり、いくつかの研究で議論されています。

超音波所見の値はこの研究では広く普及しています。これはPengらの調査結果で、舌の持続時間、振幅およびパターンの変動、Mモード超音波検査における嚥下中の運動です。別の研究では内臓および体性嚥下に関する舌の広い個人差もMモードで示されました。
さらに、舌圧とその半径方向変位の範囲、食欲をそそらない舌の作用の持続時間は性別ごとに違うため、本研究には女性のみが含まれます。

この研究の制限としては健康な年配の女性と条件が限られています。さらなる研究が必要であり、開発が計画されています。

Mモード嚥下診断の標準値はさまざまな人々のグループでこの方法を検証しています。ただし、Mモード超音波検査を使用するときには方法の検証が必要ですが、口腔期の嚥下に重要な貢献を果たします。

古典的なFEESは口腔期の評価に向いていません。改良した(O-FEES)もルーチンではできません。 VFFSは完全に口腔相も観察できますが、はるかに複雑で放射線被曝に関連します。さらに、どちらの方法でも、ある程度の患者のコンプライアンスが必要です。

これらの検査は非協力的な患者で使用に適さない状態であったり、技術的な放射線または内視鏡の存在が必要で、および施行者の経験が必要です。すべての医療および老人クリニックでできるわけではありません。

嚥下障害の診断においてMモード超音波を使うのは非常に簡単で、放射線もなく、費用対効果の高いツールです。それは生理学および病態生理学の理解に大きいに貢献するかもしれない。嚥下の有望なスクリーニング法になるかもしれず、さらには嚥下障害の危険にさらされた患者のバイオフィードバックとしての治療的アプローチも可能になります。

 

結論
舌の動きのパターンは若い女性と年上の女性の間で大きく異なります。また、超音波検査の使用は口腔期の嚥下を評価し、患者のスクリーニング方法としての使用に重要な貢献を提供する可能性がありますが、さらなる研究で証明する必要があります。

 

感想

①高齢者と若年者で舌の厚さが変わらない。→萎縮すると思いました。

②高齢ほど舌の振幅が小さく動きが早い。→遅いのかと思いました。

この研究のポイントはこの2点でした。

 

が、実際にエコーを当てると

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Mモードだと、こう見えるという事の方が私には勉強になりました。

そろそろ実践デビューしたいものです。(まだやっていない)