英国のGP ExtensivistのComplex Care Hubでの働き方(Symphony Programの紹介)
A day in the life of Dr Jo Cummings – Extensivist, Complex Care Hub
Extensivistのまとめで英国を紹介していませんでした。
とある英国Extensivistの働き方の紹介が参考になったので紹介します。
ジョー・カミングス医師はGPであり、2015年初頭に開設されて以来、Symphony Complex Care Hubのリーダーでした。彼女はExtensivistで、Multimorbidity患者の急性と慢性状態を管理する経験があります。
彼女のチームは、そのような患者のケア計画、調整、サポートを提供し、各自のケアプランに取り組んでいます。ジョーは典型的な一日の仕事について紹介します。
「私が毎朝ハブに到着したとき、電話はすでに鳴っていて、キーワーカーとケアコーディネーターはアドバイスをしたり、メッセージを取っているので忙しいです。この事例については、午前中のミーティングで話し合うことにします。ダッシュボードで一晩で起きた緊急入院・救急受診がないか確認します(これらの発生時にiPhoneでアラートもなりますので、その日中に把握できます)
今朝、ケアコーディネーターは、患者に対する緊急の医学的アドバイスを私に求め、私たちは早期に往診をする予定です。電話で出された医学的問題は、すぐにケアコーディネーターに渡され、何人かはHubに来て、急な問題に関するアドバイスを希望します。
次に、Telehealthの結果を確認します。患者の5分の1はCCG(Clinical Commissioning Group)からのTelehealth setを持っていますが、臨床医、拡張医、ケアコーディネーターが共有するタスクである私たちによって監視されています。結果の変化や深刻な問題は、ハドルでフォローアップされます。Telehealthを使用している人は主にCOPDや心不全を患っていますが、薬の調整や転倒の監視にも役立つことがわかりました。これには10分かかります。
余談:CCG(Clinical Commissioning Group)はNHSサービスの計画、設計、支払いを担当する組織です。CCGは、地元のGPと医療専門家で構成され、他の臨床医や患者と協力して、予算の支出方法を決定します。ミッション、ビジョンは下記が参考になります
NHS EAST AND NORTH HERTFORDSHIRE CLINICAL COMMISSIONING GROUP
例えばこの論文では、糖尿病と慢性腎臓病のある患者の心血管、網膜、足と骨の合併症、および入院のリスクを下げるために、CCGがSkypeを用いた遠隔医療プライマリケアサポートを提供しました。対象となった糖尿病患者2091名のうち、10%が糖尿病の専門治療への紹介を必要とし、14%が腎機能の著しい悪化を評価し、25%が血圧の薬物変更、38%が脂質管理の薬物変更、10%が抗血小板療法の開始、25%が血糖降下療法の変更について検討され、35%が骨密度の評価がされ、29%が足の神経血管合併症の高リスクに関するアドバイスがされ、貧血は13%に存在し、主に70歳以上のCKD患者に見られました。遠隔診療で慢性疾患の管理をする研究もたまに取り上げたいですね。
日常のハドル(ミーティングのようなもの)
9.30にはハドルがあり、チーム全体がリスクのある患者の状態について話し合います。ExtensivistとCarer CoordinatorとKeyworkerがリードし、チームの残りすべてが参加します。ITシステムに組み込まれたハドルシートには、スコアに従って患者がリストされます。彼らとの最近の連絡も、将来の予測される問題点とともに記録されます。
他のチームメンバーは、地域の病院の電子患者記録システムをチェックし、議論されている患者に対する他の介入を確認します。これにより、地域病院で患者と一緒に何が起こっているのか、精神保健サービス、地区看護師、GPの実践との相互作用を確認できます。
ハドルでは、リスクスコアが高い患者のみが議論されます。受診勧告または訪問が必要な人が特定され、チームのすべてのメンバーが進捗状況と潜在的なリスクについて更新されます。ハドルは20〜40分続き、その日のタスクは臨床医とキーワーカーの間で分けられます。
ある日、ハドルに理学療法士と薬剤師が加わりました。将来的には、地区の看護師、メンタルヘルスチーム、リハビリチームがハドルに参加することを計画しており、ソーシャルワーカーと緩和ケアにも参加しています。ケアコーディネーターと地区看護師、およびキーワーカーとソーシャルケアチームの仕事の間に大きな重複たあるため、患者のケアニーズに対応する人を合理化できます。
ハブはチームで構成されています。現時点では、特定の地域を担当するEvtensivist、ケアコーディネーター、キーワーカーであり、週に1回、各チームにミニハドルがあり、すべての患者が話し合い、より集中的に焦点を合わせています。
病院を訪れる
末期COPDの虚弱な患者が倒れたため、他の担当者(NPなど)は緊急訪問に行きました。彼女はすでに注意を払われており、金曜日なので行動を起こす必要がありました。診察し患者を家に置いておくことができるかどうかを確認します。そうでない場合は、虚弱高齢者評価サービス(FOPAS)でレビューを手配します。
FOPASは、フレイルな患者が入院を回避するために当日の受診と検査を受けることができる場所であり、サービスは医師と看護師だけでなく、職業および理学療法士によっても人員が配置され、ボランティア組織と一緒に働きます。
病棟に行き、入院患者を訪問します。今日、私は、EAU(緊急入院ユニット)を訪れました。新たに入院した患者の現在進行中の在宅での問題について話し合うことができます。
病棟、患者について若い医師に相談されました。作業療法士(OT)も同席し退院について話し合います。患者の精神状態は病院にいることで悪化しており、週末には退院させることにして、我々は月曜日に評価のために訪問に行くことになりました。
ハブに戻って、狭心症のエピソードが増えている患者を含むフォローアップの電話をかけます。これは、キーワーカーの日常的な電話チェックでキャッチします。超音波検査および24時間の心電図に2回参加できなかった患者をフォローアップします。患者との話し合いの後、患者は進行中のめまいのせいで救急隊員を呼んでいるので、キーワーカーに心電図と心電図を同じ日に手配するよう依頼しました。検査は10日後に行われます。
その日の訪問診療
次に、私は訪問診療に行きます。患者は、ステロイドと抗生物質治療を完了したばかりであるにもかかわらず、COPDの症状が悪化していると訴えました。臨床的には彼は悪化しておらず、私は彼の状態と現実的な将来の期待と何が起こるかについて彼自身と妻と議論しました。
別の患者の足が腫れ始め、テレヘルスでは体重が増加していることを示していました。彼女は心不全と慢性腎臓病を患っています。利尿剤を短時間増やし、腎機能を監視する必要があり採血を行いました。
それから、とある夫婦の患者を訪問します。彼女は認知症であり、彼は末期癌の可能性があると診断されたばかりですが、退院の概要に詳細が記載されていなかったため、彼らのGPは病院でのプランが分かりませんでした。私はメモを読み、問題を解決しました。訪問診療に行く前にソーシャルワーカーは予後を知る必要がありした。
ハブに戻り、採血した血液を輸送し、ITシステムへの訪問内容を記録し、コミュニティサービスに注意する必要があるときに連携カルテで共有したことを確認し、電話で把握します。
私のケアコーディネーターは、現在進行中の懸念すべき症例について私に連絡し、患者を訪問し救急隊が呼ばれ患者は緊急入院となりました。
別のケアコーディネーターと患者のところに会いに行くと、患者は安定していましたが、地域の精神科看護師(CPN)およびケアコーディネーターとの合同会議がすでに計画されており、明日はレスパイトケアになりました。
ハブにFOPASの職員がきました。「ホットオンボーディング」を紹介したい男性がいました。転倒、糖尿病、COPD、心臓病を伴う数ヶ月ぶりの3回目の病院訪問です。自宅での彼のケアの調整はうまくいっていませんでした。サービスを紹介し、チームが対処する必要がある差し迫った問題を見つけ、医師とセラピストから引き継ぎ、さらなるインプットを計画しました。
一日の終わり
ハブでは、チームの他のメンバーが新しい患者のケア計画から戻っています。これらには、患者のGPとの共同訪問、家族会議への出席、家庭評価、および定期的な患者のフォローアップが含まれます。私たち全員がその日のうちに把握し、明日のためにITシステムとハドルシートを更新します。
今日家に帰る途中で、緩和ケア患者に立ち会う時間がありました。お互いに顔を見て安心しましたが、もっと重要なことは、私が訪問することで彼女の入院や受診を2週間で5回から8週間で0回に減らしたことです。
仕事の一番いいところ
この仕事の一番の長所は、チームで働いて、個々の患者にとって本当に重要なことに集中できることです。患者の目標と彼らにとって重要な問題を特定し、それらを克服するのを助けます。仕事を始めてから、再び仕事に行くことを楽しみにしています。チームや患者と一緒に仕事をしたり、一緒にいる笑いと涙を楽しんだり、日々人々に変化をもたらしている感じています。
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Complex Care Hubを中心に、在宅から病院を舞台にMultimorbidityの患者に関わっている働き方を紹介しました。
ちなみにこの働き方をDr Ian Wyerと先ほど紹介した Dr Jo Cummingsが概念化しています。
https://www.kingsfund.org.uk/sites/default/files/media/Ian-Wyer-GP-extensivist-role.pdf
ExtensivistとCarer CoordinatorとKeyworkerがHub Teamとして仕事をして
GP、NPなどと協働しCore Care Teamを結成して
各種ケアプログラム(糖尿病、COPD、慢性心不全)と
Extended Care Team(病院での領域別専門医、メンタルヘルス、社会的ケア、セラピスト、虚弱高齢者評価サービス(FOPAS):クライシスサポートの専門家)とで連携をしていくモデルです。
サービスは急性期のケアも精密検査も、コミュ二ティホスピタルの利用もアクセスをできるように調整されています。
米国 Extensivist CareMoreでは患者のアウトカムに大きな影響を与えました。
患者の全体的な結果
・病院訪問の減少
–入院率が24%低下
・次の場合の滞在期間の短縮認めた
– 38%短い在院日数
・次の再入院の減少
–成人では8%の再入院率
疾患特有の結果の例
・糖尿病
– 平均HbA1c 7.01
– メディケア患者よりも切断率が65%低い
・CHF
- 入院が28%減少
- 在院日数が42%少ない
・COPD
- 入院が32%減少
- 在院日数が37%減少
・メンタルヘルス
- 精神科の入院が3分の1少ない
英国では Alignment Healthにより
•再入院率15 %→10%
•急性滞在期間 8-11日 →3-4日
•コミュニティーホスピタルへの滞在 15〜30日→10-12日
Hub患者は緊急入院が33%減少、緊急受診が29%減り、在院日数も46%減らせた
以上が追加資料でした。
Extensivistの紹介は以上です
まとめると
①米国Extensivistの例で南カリフォルニアのメディケアアドバンテージプランであるCareMoreの取り組みを紹介
・Extensivistは、疾患管理や在宅ケアプログラムのリソースを使いながらケアの継続性を高め、退院後の予約、領域別専門医との連携など、再入院を減らすために存在するホスピタリストの進化版といえます。
・acuteからpost-acuteの時期に60%から80%のリソースを活用するともいうフレイルな15%から20%の患者さんの退院後の介入を提供するというのは、まさに地域包括ケア病棟の役割と言ってもよいかもしれません。1週間後に在宅ケアを行い継続性を維持することもできます。
・退院後に外来検査または予約外来を設定したり、薬局や診療所への来院の費用を負担するだけで再入院を減らすことになることもあるようです。また、胸痛、一過性虚血発作、腹痛のようなものは病気の悪化に関するプロトコルとケアプランの開発も重要です。
・緊急医療センターを活用してsub-acuteな段階のCOPD増悪、脱水症、蜂巣炎、軽度の喘息、または胃腸炎などを入院せずに救急医療も使わずに治療する場を提供するという方法もあります。酸素投与や利尿剤の静脈投与などもここで行われます。
②日本でExtensixvistっぽい働きをしている病院家庭医+地域包括ケア病棟を軸にした組み合わせで4つの時期に分けて紹介しました。
・米国の虚弱高齢者診療はGPが多疾患併存を診て、Extensivistが精神・福祉・生活のサポート、クライシスマネジメントにかかわり、Clinical Care Centresが遠隔診療や遠隔モニタリング、通院サポート、Case Managerが在宅・ナーシングホーム・ホスピスのケアを担う。
・日本でのExtensivistは4種類の時期と場で活躍する。
①プレアキュートの段階では多疾患併存の管理やヘルスメンテナンスを行い、Acute ACSC(蜂窩織炎、脱水、歯科疾患、耳鼻咽喉科感染症、壊疽、胃腸炎、栄養失調症、骨盤内炎症性疾患、穿孔性・出血性潰瘍、尿路感染症/腎盂腎炎)、Chronic ACSC(狭心症、喘息、COPD、うっ血性心不全、痙攣/ てんかん、糖尿病関連疾患、高血圧、鉄欠乏性貧血)に早めに気づき、在宅集中治療あるいは短期間の入院で対応
②サブアキュートの段階では入院直後から、治療と並行して退院調整の計画を立てて、多職種による高齢者総合評価、本人・家族の情報収集、そして多職種による栄養管理・ADLを落とさない介入
③ポストアキュートの段階では回復期リハビリテーションや複雑性への介入、病院多職種・在宅多職種間の情報共有カンファレンス(在宅復帰への支援、もしくは他の病院への転院や介護施設への入所支援など)ACP(Advance care planning)を考えるきっかけにもなる
④退院後のケアの段階では退院後の訪問診療、外来診療、在宅スタッフ・開業医との協働し複雑性・SDHに多職種で取り組む
・特定看護師/NPの介入は、Extensivistの強力な味方となり、総合診療教育のリソースになりえる。
最後は順序が逆な気もしましたが
③英国GP EvtensivistのComplex Care Hubでの働き方(Symphony Program)の紹介をしました。
Symphony Complex Care HubはExtensivistとCarer CoordinatorとKeyworkerがHub Teamとして仕事をして、GP、NPなどと協働しCore Care Teamを結成して各種ケアプログラム(糖尿病、COPD、慢性心不全)とExtended Care Team(病院での領域別専門医、メンタルヘルス、社会的ケア、セラピスト、虚弱高齢者評価サービス(FOPAS):クライシスサポートの専門家)とで連携をしていくモデルである。またサービスは急性期のケアも精密検査も、コミュ二ティホスピタルの利用もアクセスをできるように調整されている。
以上、米国、英国、日本のExtensivist比較をざっくりまとめました。
参考になれば幸いです。