南砺の病院家庭医が勉強記録を始めました。

富山県にある総合病院で働く病院家庭医です。勉強の記録を少しずつ書いていきます。

コミュニティーデザインー山崎亮さん講演会 

コミュニティーデザインー山崎亮さん講演会

「ケアするまちのデザイン」雑感

 

最近、1カ月1本ぐらいのブログになっています。

充電期間のお陰で、書籍2冊、原稿3本、連載3本が一気に目途が立っていますので、少しずつ形になったものを紹介していければと思います。

 

今回は、このポスターから始めます。

 

ご存知の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?

Studio L代表の山崎亮さんです。

studio-L | スタジオ・エル

 

情熱大陸やクローズアップ現代にも出演されたことがある、コミュニティデザイナーです。


情熱大陸 山崎亮


JPIC YOUTH【公式】山崎亮さん(コミュニティデザイナー)

 

著書も多数あり、私も読んでおりました。

 

 

あの山崎亮さんが南砺市で、しかも私の勤務先のすぐそばで講演会をされていたのです。びっくりですよ。参加しない手はない。

 

さて、今回の講演テーマは「まちのデザイン」についてです。

 

「まちのデザイン」や「まちづくり」という言葉から、皆さんはどのようなものを想像されるでしょうか?

 

なんとなくいい響きですよね。

住民で街を盛り上げていこうと、地域の運動会したり、夏祭りしたり、BBQしたり、どうやったら若者が地元に残ってくれるか考えたりするイメージでしょうか?

 

大体そういうのは、地元の青年会や壮年会が中心となって企画・運営をしておりますが、人口減少に伴って、徐々になり手が少なくなっているのが現状かと思います。

 

しかも、若者は子供も小さく、子供が楽しめるイベントなら参加しますが、なかなか企画運営には忙しくて回ってきてほしくないな、と思う事の方が多いのではないでしょうか。

 

しかも田舎だと町内会の役員なんてものが回ってきます。

そしてそんなの絶対にやりたくない、という声も聞こえてきます。

町内や地域のつながりを持つとめんどくさい。役員を押し付けられそう。

地域行事もうまく続かないなんてこともあるかもしれません。

 

都会であれば、そんな関係でもなんとか自分の生活のコミュニティーができます。

しかし、田舎ではそれでは回らないのでしょう。例えば、地元の消防団が安全パトロールを行い、見守り隊が子供の安全も地域で見守っているようなのも、昔ながらの田舎の町づくりの形でした。

 

おそらく、そのようなメリットもある仕組みがなぜ続かないのか

コミュニティーの活性化に必要な

「住民が主体的」になりそして「楽しめる」デザインが必要であると山崎さんは考えます。

 

http://www.studio-l.org/project/

これだけ多くの事例の中から、南砺市の現状にピッタリな

 

を紹介されました。

 

①泉佐野丘陵緑地(大阪府)

studio-L | project | 泉佐野丘陵緑地パークマネジメント支援

平たく言うと「住民の手で公園を作ろう」です。

パーククラブに入ろう | 大阪府営 泉佐野丘陵

というホームページがあるように、山の中に公園を作る住民を集めて、「パークレンジャー」と名付けて、それぞれが、自分たちで考えて公園を作り、イベントを開いたりしています。(実際に土地の8割は、住民だけで手掛けているようです。)

 

棚田で田植えをしたり

ピザ焼きイベントしたり

RIMG5949

つばきファクトリーというアイドルとのコラボだったり


【Part 1】つばきファクトリーが行く!見所満載、春の泉佐野丘陵緑地!

 

最後のは講演会では紹介されていませんでしたが

http://izumisano-kyuryo.jp/report/

泉佐野丘陵緑地のイベント紹介で、ついつい見てしまいました。

公園に足を運びたくなる仕組みが沢山あります。

 

ここにも楽しめる仕掛けがあります。

公園を作ること自体が遊びなので、やらされている感じがない。

・おそらく若い人はやる暇がないので、元気だけど暇な前期高齢者男性をメインターゲットに設定。おじさんホイホイの仕組み。

・複数回のワークショップで、すっかり公園づくりに夢中にさせる。

仲間内で再婚したり、気の合う仲間で会社を興したりという副産物もある。

公園づくりの素人どうしで高め合うのが、効率的な学びである。

その結果、コストも節約できて、住民中心であるため市長が変わっても継続的にまちづくりが続いているのです。

 

このWSの紹介で印象的だったのは

「住民の意見は、初回、2回,3回,4回と意見が変わってきて当然。変わらないのは育っていない証拠。むしろ変わった方が良い。

つまり、最初に住民の意見交換会があっても、その意見に固執せず柔軟に姿を変えていく仕組みが重要なのでしょう。

 

そして、人口減少社会に、ただ単に補助金で人口を増やすのが正しい方法なのかというところも疑問を投げかけていました。補助金があるから住みたい町に本当にしたいのかを考える必要があると思います。目的を明確にしたいですね。

 

②ふくやま病院(明石市)

この病院は、病院移転に伴い、新しい病院を住民のニーズを踏まえて作ろうというコンセプトでできた、住民参加型の病院です。

studio-L | project | ふくやま病院コミュニティデザインプロジェクト

・また来てねと言える病院

・病院スタッフ・地域住民の参加型で病院のブランディングデザイン

・クラウドファインディングで本棚を作ろう

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新しくできる「ふくやま病院」に人と人がつながる本棚を作りたい(譜久山 剛(ふくやま つよし) 2016/06/20 公開) - クラウドファンディング READYFOR (レディーフォー)

 

印象的だったのは

・参加者をファン・信者にしてしまおう

という言葉でした。

 

信者というとなにやら怪しい言葉ですが、住民が自分で考えて取り組んだ病院やプロジェクトはその後も応援したくなるという気持ちをくすぐることが、継続的な街づくりになるのかなと感じました。前述のクラウドファンディングで本棚を作ったら、それを身に全国から出資者が遊びに来たり、そこに本を寄贈してくれたりと、まさにファンになっている循環が回っていると感じました。

 

そして、最初に住民にどんな病院がいいのかを聴くと収拾がつかなくなり、結局叶えられないとファンどころかアンチになってしまうかもしれないので、まずはコアメンバーから意見聴取するというやり方も現実的だなと感じました。とにかく、プロジェクトの進め方がうまいのでしょうね。

 

あとは途中から参加した人も継続できるように、今まで作ったものを本にまとめるという事も大事だといえます。感覚的にやっているように見えて、押さえるところはしっかり押さえているのがさすがでした。

 

③根室別院(北海道)

牡丹の案内状(裏面)+

「日本で一番朝が早い地域だから『日の出カフェ』はどうか」

「お寺で開くのだからメイドではなく『冥土カフェ』がいいな」

というやり取りで、寺を気軽によれるカフェのようなものにしたいというアイデアを作っています。

 

お寺をカフェのような身近なものにすることで

宗教に関心がない方でも安心して過ごせる、人生100年時代の生き方のモデルを作っています。

 

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北海道の端っこの根室市にある寺院です。

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このエピソードで

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・山崎さんの核となる人物を見つける能力(イケメン住職を中心に据える)

・押し付けでは駄目で、格好いいとか美しいとか感性の要素を大切にしながら、楽しく語り合うほうが共感が広がり、やる気が出る

・派手な服装に、大げさな笑い方、巧みな雰囲気づくりは、「何かできるはずだ」「活躍したい」などと、人をその気にさせるように計算しつくされている。

映画を流したいというグループでつまらなそうにしている婦人のエピソードはその典型である。映画を上映するためにスピーカーがないというところで躓いていると、その夫人は何気なく「スピーカーならあるけど」という。2カ月前に亡くなった夫が愛用していた大型のスピーカーセットを寺に提供すると、その夫人の積極性が開花する…。

 

これを山崎さんは予想していただろうか。おそらく予想はしていなかっただろう。

だが、そのチャンスを逃さないのがすごいところなのかもしれない。

WSをだらだら終わらせるのではなく、ヒーローを発掘して、中心に持ってくる

その姿に刺激を受けて、次なるヒーローが登場するという仕組みを楽しく作っているのである。

 

あとはデザイン力は何気ないところに活きてきます

「日の出カフェ」の画像検索結果

このようなロゴを、割りばしやコースターに印刷するころでブランディングができていたり

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{1B2B71E9-7266-4E43-A95C-A1010B8EA564}

https://ameblo.jp/tare-panda1980/entry-12312951093.html

坊主BARが若い女子に人気というブランディング戦略をしたりと、一人一人が楽しいことをしあうような相乗効果が生まれてくる雰囲気作りがとにかくうまいのでしょうね。

 

④野々市市地域包括ケア

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https://www.city.nonoichi.lg.jp/uploaded/attachment/1107.pdf

野々市市の活動は「雑誌を作ろう」でした。

何の雑誌かというと「インフォーマルな社会資源ガイドブック」です。

 

雑誌ではスナックのママが紹介されていたりします。

何故かというと、これがインフォーマルな社会資源、社会的処方ともいえるからです。

 

独居の高齢男性は、朝からスナックに行きます。

お酒を飲むのではなく、ママがお弁当を作ってくれるのです。

すると、お弁当箱を返しにきて、夜に飲むのです。

配食サービスにすると、社会保障として国民から負担されますが、このシステムだと本人の10割負担ですし、なにより楽しい。

誰も不幸じゃないシステムです。

 

ではなぜ雑誌に紹介するのかというと

そのママも高齢化になってきたら、継承者がいないわけです。

そんな素敵な仕組みを継続させるためには、雑誌で取り上げるという手法が有効なわけです。

住民参加型の強みはここです。

市の発刊する雑誌で「スナックのママ募集」は出来ないかもしれませんが、こういう告知であれば文句はないでしょう。

そして、第二第三の「足りない社会資源」を探すために雑誌が充実されていきます。

 

そして、ここでもオジサンがヒーローになったりします。

https://www.city.nonoichi.lg.jp/soshiki/10/964.html

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素人同士で学ぶ、医療の勉強会を企画したオジサンがいれば

 

https://www.city.nonoichi.lg.jp/uploaded/attachment/2946.pdf

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30分に1回立ち上がろうキャンペーンを普及させたオジサンもいて

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そのスタンプを作って、孫が送れるようにしたり
お互いに、素人同士て切磋琢磨しているのです。

 

ここからもわかるように

「正しいだけでは続かない、楽しいことは続く」

「長続きをするには面白いことをすればよい」

ということが良くわかります。

 

 以上4事例を踏まえての質疑応答

私がどうしても気になっていた質問は自分の気質に気づかされました。

 

「山崎さんのデザインは失敗しないのですか?」

「失敗するとしたらその要因は何ですか?」

 

この質問はよくあるようなのですが

なるほどと思ったのが

すべての事例は、部分的成功と未成功でできている

「失敗を未成功だとすれば、事例の細部に失敗は山ほどあるが、出来事を失敗ととらえない思考があると、失敗はしないともいえる。」

「また半分あると思うか、もう半分しかないと思うか」

「よく失敗から学ぶというが、自分は失敗から学ぶことができるというのは傲慢で、人は失敗から学ぶことはできないと認めることも大事、自分の失敗から学ぶことはできないし、ましてや他人の失敗から学ぶことなどできない。」

「むしろ、またやってもうた、という人間らしさを愛せない

「失敗した書道や陶芸を眺めても、何も学べない。美しい書道や陶芸から学べばよい。

私の省察的思考の対極にある思考を紹介されました。

 

何事も色々な価値があることは認めることが大事なので、自分がなれるかどうかはさておき、完璧主義にならないように緩く楽しくいくことも大事なのではないかと感じました。とはいえ、山崎亮さんの仕掛けは緻密で決してフィーリングでやっているとは思えませんが…。本を読むだけでは分からなかったメンタルの大切さを学んだことが収穫でした。

 

さて、南砺市でできるんだろうか…と思っていたら、すでにプロジェクトがあるらしく、南砺市がさらに活気付きそうな予感がします。

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写真の説明はありません。

 

教授からは「病院の中にばかりいないで町づくりしなさい」と言われました。

今までの私だと「言われるとやる気なくなっちゃうんだよねー」と思っていたが

南砺市井波が大きく変わっていく様子を見ていると、少しは町づくりに参加したくなってくるから町づくりパワーは面白い。

 

人が町を作る。原動力は面白そうかどうか。

 

ブログをまとめてみて

これも一つの南砺市への貢献になっているのだ

と都合良く解釈することにしよう。