Health Care Hotspotting — A Randomized, Controlled Trial
N Engl J Med January 9, 2020; 382:152-162. DOI: 10.1056/NEJMsa1906848
久しぶりのブログ更新です。
書類作成の重要なミッションがあり年末年始がゆっくりできた付けが回っております。簡単に言うとサボりです。臨床もまぁまぁ忙しいのですが、しょせん言い訳です。私よりも忙しくてもブログを書いている方はいるはずなので、頑張ってみます。
興味深い論文が藤沼先生のタイムラインに流れていたので、今回はリハビリを兼ねてブログの書き方を思い出そうと思い紹介します。
ニュージャージー州カムデンでは、患者の1パーセントが市の医療費の3分の1を占めています。フィリップ・トレダノによる写真
実はこの論文、藤沼先生のブログで紹介されているPopulation Health Management、つまり利用しているかかりつけの患者集団に対して、系統的に、すなわち抱えている住民の健康アウトカムの構成に影響を与える健康決定要因あるいはその決定要因にインパクトをもたらす政策と介入、を行うことに対する論考の中で紹介されています。
このブログの藤沼先生が作成された図表を引用させていただくと
図で示されるパネルマネージメントは簡単に言うと、利用しているかかりつけの患者集団に対してPopulation Health Managementを実施することで、具体的にはケアが必要なのにケアが受けられていない(Care Gap)患者にアプローチすること、医療機関にかかってはいるが、安定した単一の慢性疾患患者や健診のみで受診するような患者に継続的なケアを提供することを指します。かかりつけ医が必要とされる機能と言えます。
一方でピラミッドの頂点の層が、重症疾患であったり、主観的健康状態が悪かったり、救急外来を頻繁に利用したり、複雑な社会背景であったり、不安定な多疾患併存Multimorbidityであったり、虚弱高齢者であったり、入退院を繰り返しているといった医療費を多く使っている患者Superutilizer(高度利用者)という事になります。診療所だけではなく病院でもこのような患者さんは多くお目にかかると思います。
これも藤沼先生のブログの図ですが、上位5%のSuperutilizerがヘルスケアコストの50%を占めており、その中にComplex casesが含まれることを考えると、複雑系を得意とする家庭医が医療費を抑える役割を担っていると考えても良いかもしれません。
そんなSuperutilizerに対して、医療の介入を抑えつつケアの質を向上させるためには専門職連携あるいは、看護師等の医者以外の専門職に権限を移譲してマネージメントする必要があるのではないかと考える事に違和感はないと思われます。(もちろんPopulation Health Management全般に権限移譲は重要です)
ブログには実例として米国ソロプラクティスの家庭医Jeffrey BrennerのCollaborative Super-utilizer modelが紹介されています。
ニュージャージー州カムデンという米国の最貧地区で、彼は家庭医として働き、プライマリケアを行っています。彼のオフィスは、国内で最も高い犯罪率の1つである貧しい地域でそこに住むラテン系住民には介護サービスが必要でした。
困った街を助けたいと思ったブレナーは、仕事の一環として、彼は犯罪被害者による救急部門の訪問のデータベースを作成し、患者の住所を分析して犯罪をマッピングしました。ブレナーは、保険請求を使用して、市内全体の医療利用をマッピングできることに気付きました。彼はカムデンの3つの病院すべて(クーパー大学、ルルドの聖母、バーチュアヘルス)のデータを収集するコンピューター化されたシステムの開発に3年を費やしました。(銃で撃たれた男性のエピソードはNew Yorkerの 2011年1月24日号のAtul Gawandeによる記事「The Hot Spotters」を参照してください。)
Finding Medicine’s Hot Spots | The New Yorker
https://camdenhealth.org/wp-content/uploads/2011/03/Gawande-Camden-Annals_17.pdf
これも今回の論文で紹介されています。背景を知るためにも読んでみると良いかも知れません。
その経験を活かして、頻回ER受診、頻回CT、頻回MRI、頻回入院などの患者をピックアップし、地図上にプロットしていくと、実はホットスポットと呼ばれる患者の集積区域があることがわかりました。データベースは自由に利用できますが、そこから分かったことがありました。
①市の約77,000人の住民のほぼ半数が毎年救急部門または病院を訪れていました。ほとんどの場合、風邪、ウイルス感染、耳感染、咽頭痛などが原因です。
②患者の13%が病院費用の80%を占めました。患者の20%が費用の90%を占めました。
これ、①はパネルマネジメント、②はSuperutilizerですよね。
実際にその地域に行くと、頻回にERを受診している理由が、家にトコジラミがいて駆除するお金がないという事が分かったりするわけです。このようなものを健康の社会的決定因子(SDH)といい、貧困や社会的弱者であることが健康を左右するということを指します。このような方に、医療だけでなく福祉の視点から多職種による介入を行うと、医療費が抑えられたと報告されています。
ここまでが、前置きです。
ようやくエンジンかかってきました。
今回は、社会経済的複雑事例で医療資源を消尽する人たちに対する介入つまりHotspotting(Superutilizerの集まり)への介入の有効性を問うためのRCTというわけです。
まだ本題に入っていませんでしたが、もう十分満足しています。
背景
「高度医療利用者(superutilizer)」、すなわち医療サービスを非常に高度に利用する患者における費用を削減し、医療の質を改善することを目的としたプログラムに対する関心が広がっています。カムデン医療提供者連合 Camden Coalition of Healthcare
Providers(以下「連合: Coalition」という)が作成した「ホットスポッティング」プログラムは、高度利用者に対する有望な介入として全米の注目を集め、国中の都市に広まっています。退院後数ヵ月のあいだに、外来治療の調整と社会的サービスへの案内を目的として、組み入れられた患者を看護師、ソーシャルワーカー、地域の医療従事者から成るチームが訪問しました。
方法
医学的および社会的に複雑な状態にある入院患者 800 例を、連合の診療移行プログラムと通常の診療に無作為に割り付けました。全員がこの入院以外に過去 6 ヵ月間に 1 回以上入院していました。主要転帰は退院後 180 日以内の再入院としました。
結果
180 日再入院率は介入群で 62.3%、対照群で 61.7%でした。補正後の群間差は有意差はありませんでした(0.82 パーセントポイント,95%信頼区間 -5.97~7.61)。対照的に、介入群における登録の前後 6 ヵ月間の入院率の比較では,誤解を招くように、介入に関連して入院率が 38 パーセントポイント低下したことが示されましたが、これは対照群における同様の低下を考慮に入れなかったためでした。
結論
医療サービスを非常に高度に利用する患者を対象としたこの無作為化比較試験において、連合のプログラムに無作為に割り付けられた患者の再入院率は、通常の診療を受けた患者よりも低くなりませんでした。
早速、本文を紹介します。
アブストラクトを読んでも、Superutilizerの再入院率改善効果がなかったのではないかという結論でした。いったいどんな研究だったのでしょうか。
はじめに
米国のヘルスケアの支出は非常に集中しており、人口の5%が年間支出の50%を占め、と人口の1%が年間支出の4分の1を占めています。したがって、医療システムの「スーパーユーティリティ」をターゲットにすることで、医療費を抑制しヘルスケアの質の向上ができることに関心がもたれていました。メディアの関心と連邦政府のサポートもありプログラムはかなり前向きに受けています。Atul Gawandeのニューヨーカーの記事「ホットスポッター」で紹介されて以来、カムデン連合によって作成されたプログラム医療提供者(以下、連合)は有望なスーパーユーティリティの代表的な例になりました。連合のカムデンコアモデルは入院のリアルタイムデータを使用します。スーパーユーティリティである患者を識別するため、「ホットスポッティング」と呼ばれるアプローチを参考にしています。慢性状態および複雑な患者、困難な患者に集中的な対面で患者と繋がるface-to-faceケアモデルに焦点を当て、適切なコミュニティサービスを提供することで、健康を改善し、不必要なものを減らすヘルスケアの活用です。
このプログラムは、有望であると宣言されています。集中治療におけるスーパーユーティリティをデータ駆動型、関係基盤型で管理するためのプログラムであり、ニュージャージー州カムデン以外の都市で使用するため民間資金によりモデルが拡張されました。しかし、これまでのところ、その効果の唯一のエビデンスは医療費の分析でした。介入前後の患者および4つのサイトの評価傾向スコアマッチングを使用して比較しました。149人のプログラム患者です。もっと広く言えば、スーパーユーティリティプログラムで有望な観察研究がありました。ただし、平均への回帰がみられています。ケアが長期にわたることによる時間やコストや観察研究のバイアスがあるかもしれません。
スーパーユーティリティプログラムの有効性のエビデンスは限定的ですが、いくつかケア移行プログラムのランダム化試験があります。カムデンコアモデルのように、入院中の患者に介入を開始し退院後に多職種で介入することで再入院を大幅に減らしています。
しかし、カムデンコアモデルはより多様な人口を対象としています。より大きな社会的および医学的複雑さがあり高いヘルスケアの利用が必要です。したがって、連合が無作為化された評価をデザインすることで、全国的に認められたプログラムの評価ができます。
方法
プログラムの適格性
コムデンコアモデルはケア移行のプロであり、患者の健康を改善し、最も健康の悪い人々、脆弱な人の間での病院の使用を減らします。トライアル参加の資格は、ニュージャージーのカムデンに住んでいる18歳から80歳の大人です。犯罪率が高く、経済的に恵まれていない地域です。2017年、米国では貧困な人と定義されたのが15%でしたが、カムデンの住民の37%はそれに一致していました。
介入は、頻繁に病院受診している社会的に複雑な入院患者です。包含基準は少なくとも6か月前から4つのカムデンのいずれかでの1回でも入院された場合で、少なくとも2つの慢性疾患があり、以下のうち少なくとも2つの状態がある場合です。5つのアクティブな外来処方があり、サービス利用困難で、ソーシャルサポートが欠如していて、メンタルヘルスに問題が併存していて、活発な薬物習慣があり、そしてホームレス。
除外基準は、保険に加入していない、認知障害がある、または悪性腫瘍の治療を受けているか、外科手術を受けた場合、身体的問題がなくメンタルヘルスケアのみの場合、または進行性慢性疾患の限られた治療が可能な方でした。
対象人口は、カムデンの人口の0.5%ですが、都市の病院支出の11%を占めていました。(Appendix参照)
介入
期間限定的に集中的な臨床的、社会的介入がありました。患者は入院中に登録されました。彼らが戻ったら自宅では、登録された看護師、ソーシャルワーカー、実務の看護師、コミュニティヘルスワーカー、ヘルスコーチが関わります。チームが家庭訪問を実施し、プライマリーおよびスペシャリティケアの受診の予約をし、フォローアップケアと投薬管理と、血圧と血糖値の測定、疾患固有の自己指導を受けた患者ケア、および患者の社会サービスへの申請支援および適切な問題行動医療プログラムを行いました。この介入には多くの特徴が含まれていました。ケア移行を成功させるために重要である高コストでニーズの高い患者向けのプログラムです(Appendix)。
対照群は通常の退院を受けた在宅医療を含むケアサービスまたはその他の形式のアウトリーチです。我々は対象群がどのような退院後サービスをされていたのか観察できませんでした。
募集とランダム化
Cooper University HospitalとOur Lady Of Lourdes Hospitalで募集が行われました。カムデン連合健康情報交換データベースCamden Coalition Health Information Exchange
databaseを使用して、これらの病院での病院の電子カルテから適格者の毎日更新された情報を提供します(2014年7月現在)連合のリクルーターがこれらの患者にアプローチし、彼らの適格性を確認し、書面によるインフォームド・コンセントを取得し、ベースライン調査を実施しました。リクルーターはランダム化し患者に通知する割り当てを行います。完了したすべての患者のベースライン調査は20ドルで補償されました。募集に関する詳細とランダム化はAppnedixに記載があります。
トライアル人口は2014年6月2日から2017年9月13日まで登録されました。患者はトリアージされ、リクルーターは1442が適格とみなしました。 809人の患者が同意し、半分は無作為に治療に割り当てられました。809人の患者のうち5人が拒否され除外されました。登録された残り4人の患者は800名の目標値に達成したため除外されました(図1)
図1. スクリーニング、ランダム化、および分析
データソース
一次データは2018年3月31日までに収集された4つのカムデン病院システムからの退院データでした。ニュージャージー州Camdenの居住者が98%占められます(Appendix)。退院データには入院と退院が含まれていました。退院日、診断、支払い、および患者の識別情報を調整します。これらのデータをカムデン連合に含まれているデータベースで補完しました。患者782人と一致しています(98%)(Appendix)
アウトカム
一次アウトカムは退院後180日の再入院でした。二次アウトカムは退院後180日間の再入院の数、再入院が2回以上の割合、入院日、請求、受け取った支払い、および死亡率です。
統計分析
治療群および対照群の患者で線形回帰を使用して結果を比較しました。精度を高めるために、事前に指定された年齢の共変量(患者を5年ごとにグループ化増分)、性別、非ヒスパニック系黒人およびヒスパニックの指標などを含めました。
結果
(表1)年齢、入院回数、給与、メンタルヘルス診断は退院データから得られました。
人種、民出身地、雇用状況に関するデータはデータベースから得ました。
表1では6か月間の入院患者平均は1.8人でした。一般的な成人カムデン人口全体の入院回数0.1未満です(Appendix)50%が男性でした。40%は55歳未満でした。30%は65歳以上でした。非ヒスパニック系黒人は55%、30%はヒスパニック、15%が非ヒスパニック系白人でした。Table S1,2では4分の3が未婚で、高校の卒業が半分、および5分の3が報告されたMorbodityの支援が必要です。ほぼ全体が仕事をしておらず(95%)、40%が薬物乱用でした。メディケアが48%、メディケイドが45%でした。
プログラムの実施
表2に、プログラムの実装方法を示します
プログラムの指標に関するデータは、カムデン連合の記録からのものです。
治療群の患者の間では、95%がプログラムと少なくとも3回登録後のスタッフと出会っていました。平均して、患者は7.6の家庭訪問と8.8の電話をスタッフから受けて、2.5回医師が訪問し、90%が30日以上連合と協力していた。プログラムの参加日水医の中央値は92日間でした。目標はプログラムスタッフが5日以内に家庭訪問し退院7日以内に医療提供者が自宅に訪問することです。患者の60%が目標達成されました。4分の3の患者は14日以内にスタッフが訪問し60日以内に医療提供者が訪問しました。
治療および対照群の6か月の参加率です(表3)栄養補助食品補助プログラム介入に関連していたのは4.6パーセントでした(95%信頼区間[CI]、0.5〜8.6)
介入の効果表4は、介入の効果を示しています。
180日間の再入院率は62.3%治療群と対照群の61.7%でした。一次アウトカムでは介入が大きな影響を与えませんでした。調整された再入院率は対照群よりも介入群の方が0.82%だけ高い値でした(95%CI、-5.97~7.61; P = 0.81)。調整後は0.64でした(95%CI、-6.12~7.40)(詳細については表S6を参照)。介入また、二次のいずれにも影響はありませんでた。
介入グループの前後解析
ランダム化の結果とは対照的に、介入グループ単独の入院率の前後6か月を比較すると、誤解を招くように入院率が大幅に減少していました。それに対して介入群にはそのようなことはありませんでした。
図2は、前後の四半期ごとの入院率です。介入と対照群で入院は介入前の6ヶ月で急激に増加しましたが、介入前その後急速に落ちました。
さらに、介入前後の入院の変化では、介入グループは介入前の変化に非常に敏感でした。介入群では6か月後の再入院率が38パーセント低下し、12か月~18か月では29%低下していました(表S5)。
ディスカッション
800件の試験を含むこのランダム化された評価ではカムデンコアモデルは95%信頼区間ルールでは180日間の再入院に影響はありませんでした。ですがメディケアで45%から15%に再入院を減らせたケア移行プログラムの説明を否定はできません。カムデンモデルは、異なる母集団を対象としています。より若く、より多様な医療ニーズ、より社会的複雑さ、非常に高いヘルスケアの活用があるからです。病院利用率は最も成功したケア移行を含むフルプログラムの2倍でした。
私たちの結果は、医学的・社会的に複雑な集団に対するスーパーユーティリティプログラムに課題があることを示唆しています。この介入はランダムに入院患者から慢性疾患患者をピックアップしたもので、厳密にはカンデムのモデルとは異なり、退院後のケア移行に焦点を当てていません。複雑なケースでは患者に必要なリソースが不十分です。連合が継続して患者のニーズに適合できるように働きかけ続け、ケア提供をデザインしなおす必要があります。(参照:Comprehensive Care Physician: Integrated Inpatient and Outpatient Care for Patients at High Risk of Hospitalization)
プログラムへの関与は高く(患者の95%が少なくともプログラムスタッフによる3回の訪問があった)、そして患者は集中的介入(7.6の家庭訪問の平均)があった。しかしサービスのタイミングに関連する2つのプログラム目標:退院後5日以内のスタッフ家庭訪問と退院7日内のプロバイダー訪問が達成されたのはわずか30%でした。居住が不安定であったり、電話がないということが関係していました。
私たちの調査結果はスーパーユーティリティーをターゲットにした戦略の資金的な挑戦を反映しているかもしれません。現在医療費のかかっている多くの患者は将来的にはそんなに医療費がかかりません。この傾向はさらにコスト配分が高くなるについて顕著になります。さらに、医療費が持続的に高いことは潜在的な予防可能な入院と関係がある可能性もあります。このような平均値への回帰は、厳密な評価の重要性を必要とします。
スーパーユーティリティプログラムのランダム化試験は、スプリアス効果の検出になるかもしれません。介入群でも対照群でも同じだけ再入院が減っているという解釈の危険です。
このトライアルにはいくつかの制限があります。このケア移行プログラムが複雑性の乏しい患者に同じだけ再入院を減らすことを同定する検出力があったのかということです。しかし、このトライアルには臨床的に意味のある小さな削減の検出力がありませんでしたし、特定のサブグループ内での異なる効果を分析することもできませんでした。データはプロバイダーとの関係性の改善効果を認めませんでしたし、対照群との比較もできませんでした。カムデンの通常ケアは試用期間中に進化し、他の複数のケア管理プログラムは既に始まっていたため、患者とスタッフを退院後7日以内に結び付けるキャンペーンが広く行われていたため対照群との差が出なかったのかもしれません。
これらの制限にもかかわらず、トライアル版は厳密なエビデンスを提供します。それはスーパーユーティリティを対象とした認定プログラムが全国的にヘルスケアシステムに拡張されて認識されているという事です。その結果は、両方の挑戦を示唆しています。医学的・社会的に複雑なスーパーユーティリティのに再入院を減らすことの挑戦。そしてランダム化された評価を行うことで高コストの患者をターゲットにした実質的な回帰を示す観察研究の実施の挑戦です。
最後に余談
ホーソン効果をご存知でしょうか?
ホーソン効果(ホーソンこうか、英: Hawthorne effect)とは、治療を受ける者が信頼する治療者(医師など)に期待されていると感じることで、行動の変化を起すなどして、結果的に病気が良くなる(良くなったように感じる、良くなったと治療者に告げる)現象で、↓これの㉕の研究でも紹介しています。
ちなみにこの名はホーソン工場で実施された労働者の作業効率を向上させるための調査から発見された現象であることが由来です。ホーソン効果は、プラセボ効果の一部として統計上扱われる場合があります。 (ホーソン効果 - Wikipedia)
即ち今回の研究でもホーソン効果 Hawthorne effectという医師患者関係が結果に及ぼすバイアスがあることについては考慮される必要があります。被験者または調査者の直接または間接的な観察、研究における以前の選択およびコミットメント(合意書)、および社会的望ましさに関連する行動の変化というと難しいですが、下のイラストが一番わかりやすいと思います。
文献読みたければ、ホーソン効果(Hawthorne effect):系統的レビューとメタ分析
The Hawthorne effect: Systematic review and meta-analysis. Eur J Gen Pract. 2019; 25(3): 164–175. をご参照ください。
まとめ
・Population Health Managementの研究がNEJMに掲載された。
・Health Care HotspottingといえばJeffrey BrennerのCollaborative Superutilizer model
・2011年Atul GawandeによるNew Yorkerの記事「The Hot Spotters」がきっかけ。
・上位5%のSuperutilizerがヘルスケアコストの50%を占めており、その中にComplex casesが含まれる
・superutilizerに対する多職種ケアで180日以内の再入院率に対象群との差はなかったが、患者層の複雑性が軽すぎた、対照群も多職種介入が発達していた、検出力が足りなかったなどの要因が考えられる。
・ホーソン効果はこの手の介入研究では考慮する必要あり。