南砺の病院家庭医が勉強記録を始めました。

富山県にある総合病院で働く病院家庭医です。勉強の記録を少しずつ書いていきます。

嚥下評価にエコーは使えるのか?

嚥下評価にエコーは使えるのか?

 

最近、エコーの話題をしようと思っていてすっかり忘れていました。

どうやら嚥下評価にもエコーが使えるようなので勉強してみました。

我ながら、一度もやったことがないものを良くまとめたものだと感心します。

 

 

摂食嚥下機能評価チーム

実は当院では7年前から「摂食嚥下機能評価チーム」というものがあり

食べられない原因をみんなで考える取り組みをしています。

 

病院内だけでなくポータブル嚥下内視鏡というものを用いて

在宅やベッドサイドで嚥下評価しているため

高齢者の食べることのサポートは他の医師よりも多くの経験をさせていただいています

 

f:id:MOura:20191116003049j:plain

ちなみにこのポータブル嚥下内視鏡は、iPadと接続して供覧できます。

 

在宅リハビリを頑張っている患者さんの治療効果判定のために使用することもあり、その結果を参考に、患者さんを囲んで今後どうしていきたいかを話し合う事もあります。

 

その成果を、当院の荒幡先生が

A comprehensive intervention following the clinical pathway of eating and swallowing disorder in the elderly with dementia: historically controlled study.

BMC Geriatr. 2017 Jul 14;17(1):146.

Arahata M, Oura M, Tomiyama Y, Morikawa N, Fujii H, Minani S, Shimizu Y.

https://bmcgeriatr.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12877-017-0531-3

でまとめています。多職種による包括的介入が認知症の摂食障害を改善させたという研究です。

 

そんな嚥下評価をちょっとかじっている私ですが

便利な環境であるがゆえに、エコーを使おうという気がおきませんでした。

ちょっと嚥下を見たいと思ったときに、嚥下内視鏡が出てきてしまうのです。

ですが、もしエコーで嚥下障害の画像評価ができれば、在宅でも簡単に評価できるかもしれませんし、看護師や言語聴覚士が使いこなせばさらなる判断材料が増えるかもしれません。

 

という動機でエコーを勉強しなおそうと思った次第です。

 

摂食・嚥下機能評価のスクリーニング

摂食・嚥下機能評価のスクリーニングには

反復唾液嚥下テスト(RSST)

改訂水飲みテスト(MWST)

フードテスト(FT)があり

嚥下の繰り返し能力や、呼吸状態や口腔内残留を診ることで

誤嚥のリスクを推定できます。

 

反復唾液嚥下テスト(RSST)の感度は0.98、特異度は0.66と報告されています。

つまりテスト陰性(3回以上)であれば誤嚥の確率はかなり低く

テスト陽性(3 回未満)のときに実際に誤嚥する確率は75%程度です。

https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/VF15-1-p96-101.pdf

 

改訂水飲みテスト(MWST)はカットオフ値を3点とすると

感度は0.70、特異度は0.88とされており 

フードテスト(FT)はカットオフ値を4点とすると

感度は0.72、特異度は0.62と報告されています

https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/assessment2015-announce.pdf

 

感度の高いRSSTで除外できるか判断し、特異度の高いMWSTで誤嚥を見つけるという使い分けはできると思われます。

 

そして基本的にこのスクリーニングで問題があるか、あるいは判断に迷う場合に

画像診断を行うことになります。

 

嚥下障害の画像診断

画像診断には

嚥下造影検査(VF)

嚥下内視鏡検査(VE)があります。


 

 

これらは、不顕性誤嚥の診断にも役立ち、嚥下機能を把握する有用な検査ですが

患者の状態や周囲の環境ではこれらの検査ができないこともあります。

たとえば、透視室が使えなかったり、内視鏡がなかったりといった感じです。

 

エコーによる嚥下機能評価

エコーであればベッドサイドで簡便に行うことができ、侵襲性が低く評価できます。造影剤を用いる必要がなく、食事の制限もないです。そして、筋や軟部組織の描出に優れているので、その形態の評価がしやすいという特性があります。

そしてなにより、練習すれば、看護師や言語聴覚士も検査とアセスメントができるので、検査結果を日々のケアに反映できる可能性が高まります。

 

使用する機器

具体的には

深部の観察(舌骨や口腔内)はコンベックス(3~7MHz)

浅部の観察(声帯や気管内)はリニアプローブ(10~15MHz)を使用します

f:id:MOura:20191116005340p:plain

嚥下を観察するときのポイント

ここに、エコーを用いての嚥下運動の観察は座位で行います

ゼリーを塗ると重力で垂れてしまうので、固めのゼリーを使用しましょう。

そして、プローブを押し付けすぎると、嚥下が妨げられますので、いつも通りの嚥下ができているかを確認しながら行うことが重要です。

 

見るべきポイントは2つ 舌骨と声帯

舌・舌骨・舌骨下筋群

誤嚥の原因の一つに、喉頭挙上不全といって、喉頭が十分に上がらない状態が挙げられます。喉頭の位置が下がっていると、十分に上げられなくなり、食道入口部の開きも狭くなり、気管に食事が入ったり、食塊がひっかかったりするのです。

ãè骨 ç¢ç¶æ­ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

 

下顎骨オトガイ隆起と舌骨先端を結ぶ直線に沿ってコンベックスプローブを当てます。

舌の評価は、オトガイ下矢状断層面で高エコーの厚さを測ることがあります。

また、舌骨(H)(後方に音響陰影があるのが特徴)が嚥下時に頭側に移動し、終了時に脚側に移動するのが見えます。

f:id:MOura:20191116012344p:plain

http://square.umin.ac.jp/jjcrs/2016_55-60j.pdf

f:id:MOura:20191116011341p:plainhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/54/9/54_657/_pdf

図2の顎二腹筋前腹はオトガイ下冠状断層面で描出でき、その断面積の計測結果は MRI による計測と高い相関を示すと報告されています。

ですが、ひとまず最初は舌骨の挙上ができているかを判断するのが使いやすいと思われます。

声帯

声帯の観察では、甲状軟骨の上に長軸方向にリニアプローブを当てます。

ãè骨 ç¢ç¶æ­ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

f:id:MOura:20191116012808p:plain

 

高輝度な線は、皮下組織と気管の境界です。

発声時に細かく震えている高輝度エコー像が声帯です。

 

誤嚥のエコー所見は、誤嚥した物質(水や食物)の気泡や水や食物との境界面で反射するため高輝度エコー像として認められます。

 

つまり、声帯をみつけて、それよりも脚則に高エコー像をみとめれば、それは誤嚥である可能性があるのです。

f:id:MOura:20191116012738p:plain

https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-23659999/23659999seika.pdf

極めてシンプルにまとめると

 

 

①まずコンベックスで舌骨みつけて、喉頭挙上の確認

②次にリニアで声帯見つけて、それより脚側に高輝度の塊があればそれは誤嚥

ということになります。

 

超音波検査の限界

https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-23659999/23659999seika.pdff:id:MOura:20191116013748p:plain]

 

もともとのエコーでは、感度は61%、特異度は84%

誤嚥部分のみ再構成した研究では、感度は82%、特異度は81%

であり、実際の嚥下エコーでは、感度はやや低めです。

 

勇美記念財団でも在宅の嚥下エコーの研究がされていますが

咽頭残留の評価では感度68%、特異度63%と低く、簡易スクリーニングと大差ない結果であったと報告されています。

http://www.zaitakuiryo-yuumizaidan.com/data/file/data1_20180824065008.pdf

 

現時点では、嚥下内視鏡前のスクリーニングとしての有効性はあるのかもしれませんし、機能面での改良が望まれます。

 

まとめ

嚥下エコーは機械の性能さえ上がれば、簡易よりも精度の高いスクリーニングができ、低侵襲で実施できる可能性がある。

さらなる研究も続々出ていますので、リハビリ領域ではホットな話題になると思います。