多職種協働に関連するアウトカムの改善
Improved Outcomes Associated With Interprofessional Collaborative Practice
Ann Fam Med August 2019 vol. 17 no. Suppl 1 S82
今回は、短めで(これがUPされる頃には、おそらく北信越HANDSという人財育成(Faculty Development)の勉強会の飲み会をしていることでしょう。)
多職種協働や多職種連携教育など用語も多く
それらの概念を理解して実践することも重要だと思います。
例えば
医療保健福祉分野の多職種連携コンピテンシー
Interprofessional Competency in Japan
http://www.hosp.tsukuba.ac.jp/mirai_iryo/pdf/Interprofessional_Competency_in_Japan_ver15.pdf
では
多職種連携能力のコア・コンピテンシーの紹介(Hugh Barr)
他の専⾨職と区別できる専⾨職能⼒ (Complementary)
全ての専⾨職が必要とする共通能⼒(Common)
他の専⾨職種と協働するために必要な協働的能⼒ (Collaborative)
★コア・ドメイン
①患者・利⽤者・家族・コミュニティ中⼼
Patient-/Client-/Family-/Community-Centered
患者・サービス利⽤者・家族・コミュニティのために、協働する職種で患者や利⽤者、家族、地域にとっての重要な関⼼事/課題に焦点を当て、共通の⽬標を設定することができる。
②職種間コミュニケーション︓Interprofessional Communication
患者・サービス利⽤者・家族・コミュニティのために、職種背景が異なることに配慮し、互いに、互いについて、互いから職種としての役割、知識、意⾒、価値観を伝え合うことができる。
★コア・ドメインを⽀え合う 4 つのドメイン
①職種としての役割を全うする︓Role Contribution
互いの役割を理解し、互いの知識・技術を活かし合い、職種としての役割を全うする。
②関係性に働きかける︓Facilitation Relationship
複数の職種との関係性の構築・維持・成⻑を⽀援・調整することができる。また、時に⽣じる職種間の葛藤に、適切に対応することができる。
③⾃職種を省みる︓Reflection
⾃職種の思考、⾏為、感情、価値観を振り返り、複数の職種との連携協働の経験をより深く理解し、連携協働に活かすことができる。
④他職種を理解する︓Understanding for Others
他の職種の思考、⾏為、感情、価値観を理解し、連携協働に活かすことができる。
という枠組みをしっかり整理できるので個人的には必読です。
私が住んでいる富山といえば、まちなか総合ケアセンターが有名ですし
http://machinaka-care.city.toyama.lg.jp/attach/EDIT/000/000405.pdf
この記事にも先述の概念図がかみ砕いて説明されているので、是非ご覧下さい。
が、今回はAnnals of Famiry Medicineの最新刊のものを紹介します。
枠組みの勉強は行ったり来たりしながら勉強していった方が実践的かと思います。
目的
ミッドウェスタン大学は、新しい外来診療センター(ACC)の家庭医学のレジデンシーと学部の実践の中で、多職種協働(IPCP)モデルを設計および実装しました。私たちの研究の目的は、ACCが開く前の年(2016年)とIPCPモデルに基づくACCの最初の年(2017年)の患者の転帰と費用を比較することにより、IPCPモデルの有効性を評価することでした。
方法
2016年に以下の臨床基準の1つを満たした縦断的に追跡するハイリスク患者のコホートを特定しました。年の前半または後半に3回以上の救急部門の受診。ヘモグロビンA 1c値が9%以上。または、LACEスコア(length of stay滞在期間, acuity切迫さ, comorbidities併存疾患, emergency department visits救急部門の訪問の頭文字)による再入院リスクが10以上の場合。患者の人口統計を表1に示します
http://www.AnnFamMed.org/content/17/Suppl_1/S82/suppl/DC1
2017年末までに、ACC以外のプライマリケア臨床医に切り替えた、退去した、または死亡した場合、患者は除外されました。2017年末の電子医療記録のレビューから、276人の患者が包含および除外基準を満たしていると判断しました。アウトカム指標には、救急部門の受診、入院、ヘモグロビンA 1c値、および患者の費用が含まれていました。
多職種教育と多職種協働の定義は、ACCで実施されたIPCPモデルに情報を与えました。スタッフと臨床医のトレーニング、患者ケアの準備、ケア会議の計画など、3面からのアプローチを使用してモデルを構築しました。IPCPモデルの実装により、共同ケアを促進する文化が意図的に確立されました。ACCの開設前後に、雇用を中心とした3つの助成金支援トレーニングセッションを提供しました。午前と午後のクリニックの前にチーム全体で毎日のごちゃまぜが発生し、その間にチームは安全性の問題を確認し、チームメンバーを認識し、ケアの問題を強調し、発表を共有しました。
余談:多職種連携といえば宮崎大学の吉村学先生です。
初期研修時代に揖斐からお越しいただいた時に、ごちゃまぜと俳句のインパクトがすごかったのを覚えています。
Daily huddlesをそのまま日々のごちゃまぜと訳してしまいましたが、ニュアンスは違うと思います。でもどうしても、ごちゃまぜと言いたかったのです。
ごちゃまぜの後、診療所の前に、ケアチームは、医療助手と一緒に専門職間のケアを含む患者のニーズについて話し合い、レジデント、ナースプラクティショナー、または教職員を含む訪問計画を実施しました。IPCPの専門家は、個別に、またはチームとして知られる専門家の小さな組み合わせで、1日を通して継続的に患者ケアに協力しました。すべてのACC患者は、プライマリケアの臨床医または医療助手から温かくIPCPチームメンバーに紹介されました。リスクの高いレジストリからの患者の事例は、電子医療記録の共同ケア文書に記載されたケアに関する推奨事項とともに、専門家チームへの毎週の共同ケア会議で提示されました。
結果
ハイリスク群のコホートでは、IPCPの実施により、救急部門への来院で16.7%、入院で17.7%、ヘモグロビンA 1cレベルで0.8 %、総患者負担額で48.2%の絶対的な減少が見られました
付録2の表2 http://www.AnnFamMed.org/content/17/Suppl_1/S82/suppl/DC1
結論
この結果は、IPCP介入と健康アウトカムの改善とコスト削減の関連を示唆しており、行動統合型プライマリケアおよび家庭医学レジデンシートレーニングプログラムでのIPCP使用からの知見と一致しています。観察された利点は、米国の医療制度改革に関連する3つの目的にも合致しています。制限は、IPCPモデルの資金調達に取り組むないが含まれ、無作為化設計、成果への個々の職業の貢献の影響があるかもしれません。これらの制限にもかかわらず、介入の持続可能性と複製可能性を調査するためにこれとその後のコホートを続けているので、我々の結果は勇気づけられます。
まとめ
・ハイリスク群のコホートでは、IPCPの実施により、救急部門への来院で16.7%、入院で17.7%、ヘモグロビンA 1cレベルで0.8 %、総患者負担額で48.2%の絶対的な減少が見られました。
・IPCP介入と健康アウトカムの改善とコスト削減の関連が示せれば、医療制度改革に考慮されるかもしれないため、有用なデータとなります。