南砺の病院家庭医が勉強記録を始めました。An archive of medical articles summarized by a family physician from Nanto Municipal Hospital.

An archive of medical articles summarized by a family physician from Nanto Municipal Hospital.富山県にある総合病院で働く病院家庭医です。勉強の記録を少しずつ書いていきます。

喘息、頚部・背部痛、陣痛、TIA、不安に対するCBT AFP Clinical Answers 2019 Aug 15

Asthma, Back and Neck Pain, Pain During Labor, TIA, CBT for Anxiety

Am Fam Physician. 2019 Aug 15;100(3):208.

 

今回はAFP Clinical Answersからの紹介です。

まとめるとなんてことはないですが

家庭医療の最新情報を抑えるのは大事という事で。

 

ありがたいことにfacebook経由では家庭医・病院総合医の皆様が見てくださいますが、Twitterも始めたところこれまで全く総合診療に関わっていないドクターからコメントをいただけたり、世界で活躍されている家庭医のフォロワーが少しずつ増えていて驚かされます。インターネットすごいですね。

 

では本題に入ります。

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①硫酸マグネシウムの静脈投与は、急性喘息増悪の治療に有効ですか?

②背中と首の痛みに手技療法は効果的ですか?

③マッサージ、温熱治療、そしてリラクゼーション法のような補完治療、統合治療は分娩中の痛みを管理するために効果的ですか?

④TIAまたは軽度脳卒中の安全に転帰を改善させるために、アスピリンにクロピドグレルを追加することは有効ですか?

⑤セラピストがインターネット経由で行う認知行動療法(CBT)は、成人の不安のための効果的治療法でしょうか?

の5本を紹介します。

 

①硫酸マグネシウムの静脈投与は、急性喘息増悪の治療に有効ですか?

www.aafp.org

急性喘息増悪で救急外来を受診しファーストライン療法(短時間作用型気管支拡張薬およびコルチコステロイド)に応答しなかった患者で、硫酸マグネシウムの静脈投与で効果的に治療することができました。小児では硫酸マグネシウムが入院を68%減少させました(推奨B 3つの小さなRCTのメタ分析)。成人では硫酸マグネシウム(1.2g~2g)が入院を25%減少させました(推奨A 14のRCTのメタ分析)NNTは7(95%CI, 2-13)

 

②背中と首の痛みに手技療法は効果的ですか?

www.aafp.org

脊椎指圧療法は、他の治療法と同等に最大6週間で痛みや機能の適度な改善を提供するために、急性腰痛患者のために考慮することができます。それはまた、慢性腰痛の患者さんのために考慮することができます。これは、最大6ヶ月間の痛みや機能の適度な改善をもたらし、他の治療法と同等です。頚部の操作および可動は、首の痛みを有する患者において疼痛緩和及び機能の短期的改善を提供することを考慮してもよいです。また片頭痛には操作療法はアミトリプチリンと同じ効果があり、痛みの頻度と強度を減らします。

 

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オステオパシー(脊椎指圧療法)の方法

Counterstrain


Counterstrain and Facilitated Positional Release

Muscle Energy Technique


Muscle Energy Technique For The Lower Back

Soft Tissue Therapy


Soft Tissue Therapy for the Thoracic Spine with Arnaud Domange

Spine Manipulation


Cervical Spine Manipulation

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急性・慢性腰痛患者には脊椎指圧療法が6週間での痛みと機能の改善において他の治療法に匹敵する(推奨B)

頚部の操作も(推奨B)

操作療法は小児には推奨されない(推奨B)

重篤な有害事象はまれである(推奨B)

 

③マッサージ、温熱治療、そしてリラクゼーション法のような補完治療、統合治療は分娩中の痛みを管理するために効果的ですか?

すべての介入は、分娩にいくつかのベネフィットを持っていましたが、エビデンスが非常に低く、質も低いです。マッサージ、熱介入(暖かいと冷たいパック)、リラクゼーション法、ヨガ、そして音楽がアクティブな分娩中ではなく潜在的な分娩には痛みを抑えます。熱介入とヨガは、暖かいパックで66分の平均差で分娩時間を短縮します。冷たいパックと断続的な寒暖パックの78分、通常のケア対ヨガで140分の短縮をみとめます。ヨガは、痛みの軽減と満足度を向上させ、リラクゼーション法は、患者が痛みをコントロールし、高い満足度を報告する可能性を高めます。マッサージは分娩経験を持つ妊婦の満足度を向上させました。

 

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マッサージは陣痛を軽減する(NNT=2)

リラクゼーションは満足度と疼痛緩和(NNT=3)

マッサージは妊婦の満足度を上げる( NNT=3)

温かいパックは分娩時間を66分短縮し、冷パックは78分短縮し、ヨガ・通常ケアは140分短縮し、ヨガの仰臥位は191分短縮した。

 

④TIAまたは軽度脳卒中の安全に転帰を改善させるために、アスピリンにクロピドグレルを追加することは有効ですか?

ランダム化比較試験では、軽度の虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)発症の一週間にアスピリンにクロピドグレル(プラビックス)を追加する戦略で発症率の抑制を認めました(4.6% vs 6.3% P=0.01 NNT=59) 有害性(出血性事象)は、併用群で有意にみられました(0.9% vs 0.4% ; P=0.01 NNT=200)

 

⑤セラピストがインターネット経由で行う認知行動療法(CBT)は、成人の不安のための効果的治療法でしょうか?

セラピストがインターネット経由で行う認知行動療法(CBT)は、成人における不安に対して効果的治療として使用され、対面するCBTの効果に類似していることができます。(推奨B RCTのシステマティックレビュー)

2015年までの不安障害に対するインターネットによるCBT介入群(SMD=0.09)と対面群(SMD=0.17)で症状改善に差はなかった

 

明らかに②に興味があるボリュームでしたが、知らないものほどよく勉強したくなるものですね。

 

まとめ

・喘息発作に硫酸マグネシウム静脈投与は有効。小児は入院を68%減少させ(推奨B)、成人は入院を25%減少させた(推奨A、NNTは7(95%CI, 2-13))

・急性・慢性腰痛患者への脊椎指圧療法は、最大6週間での痛みや機能の適度な改善について他の治療法と同等である。

・マッサージは陣痛を軽減する(NNT=2)、リラクゼーションは満足度と疼痛緩和(NNT=3)、マッサージは妊婦の満足度を上げる( NNT=3)、温かいパックは分娩時間を66分短縮し、冷パックは78分短縮し、ヨガ・通常ケアは140分短縮し、ヨガの仰臥位は191分短縮した。

・軽度の虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)発症の一週間にアスピリンにクロピドグレル(プラビックス)を追加すると発症率の抑制を認めた(4.6% vs 6.3% P=0.01 NNT=59) 有害性(出血性事象)は、併用群で有意にみられた(0.9% vs 0.4% ; P=0.01 NNT=200)

・2015年までの不安障害に対するインターネットによるCBT介入群(SMD=0.09)と対面群(SMD=0.17)で症状改善に差はなかった。