南砺の病院家庭医が勉強記録を始めました。An archive of medical articles summarized by a family physician from Nanto Municipal Hospital.

An archive of medical articles summarized by a family physician from Nanto Municipal Hospital.富山県にある総合病院で働く病院家庭医です。勉強の記録を少しずつ書いていきます。

病院総合医研修に関するガイドラインについて(その3 各論)

STFM Resource Library より

Hospital Medicine Curricular Guidelines or Track Recommendations for Family Medicine Residencies

SHM(Society of Hospital Medicine)とSTFM(Society of Teachers of Family Medicine)の合同タスクフォースで作成した家庭医療のレジデントのための病院でのトレーニングのガイドラインです。とりあえず、これをまるっと翻訳した方は国内にいないようなので(google調べ)紹介します。

これまでの記事はこちらです。(最後にくっつけます)

 

moura.hateblo.jp

 

moura.hateblo.jp

 

今回は 病院総合医研修に関するガイドラインについて(その3 各論の続き)

Patient safety 患者の安全性
Prevention of healthcare-associated infections and  antimicrobial resistance 院内感染症の予防と抗菌薬耐性
Quality improvement 質の改善
Team approach and multidisciplinary care チームアプローチと集学的ケア
Transitions of care ケアの移行

まで紹介します。 

 

Patient safety 患者の安全性

医療ミスは米国における死因の第3位です。特に入院中は医療ミスで死亡されるリスクが高いです。こういった有害事象を予防し改善するために、ホスピタリストは病院、ヘルスケアシステムの中であらゆる努力をすることが責務であります。

 

f:id:MOura:20190710011937j:plain

患者の安全性 知識・技術・態度
  • 人的要因、プロセスやシステム障害、高度な機能のチームの役割を含めて患者安全の知識をもつ。前向き評価と後ろ向き評価の両方によるエラーによって起きた害のスペクトルを認識する。Root Cause Analysys(根本原因解析)などのツールを使用するシステマティックレビューを報告するだけでなく、促進する文化の必要性を理解する。
  • 害を防ぐために開発されたプロトコルに従うだけでなく、ガイドラインに準拠した学際的チームでのケアの指針に基づくパスを作る技術。個人やシステムの改善のためには、データを継続的に使用にしたり継続的に評価することで、安全の推進や害を避けることができます。
  • 自主的で継続的な安全を追及する態度。バーンアウトのような職場のリスク要因に対処するだけでなく、有害事象に対する懲罰的でない対応を推進する職場文化の促進を含めたエラーの特定および報告の態度。確立された安全医療をさらに強化し予防可能な害を減らすための新しいプロセスを開発するチームで貢献するだけでなく、そのプロセスを遂行する態度。

が必要です。

EPAでは

f:id:MOura:20190710203633j:plain

患者の安全 EPA

EPA2 様々な状況で患者や家族のためにケアができる

EPA4 健康を改善し、病気や怪我のリスクファクターを是正し、治療可能な早期に病気を発見する予防的ケアを提供する

EPA9 急性期の病気や怪我を診断し管理できる

EPA13 入院患者のケア、退院患者のマネジメント、ケアの移行がマネジメントできる

EPA19 多職種連携のヘルスケアチームでリーダーシップを提供できる。

追加資料は、The Institute for Healthcare Improvement (IHI)の資料が動画も豊富で勉強になりました。

Prevention of healthcare-associated infections and  antimicrobial resistance
院内感染症の予防と抗菌薬耐性

外来環境で家庭医が抗生物質の管理に責任を担っているのと同じように、家庭医療のトレーニングを受けたホスピタリストは、病院での院内感染の予防を任されています。院内感染は入院期間の延長につながることが多く、毎年多くの費用が掛かっています。ホスピタリストは他の医療スタッフと協力して、院内感染を減らし、予防のためのしくみを開発し、エビデンスに基づく感染防止対策を推進し実行するべきです。

f:id:MOura:20190710204700j:plain

院内感染の予防と抗菌薬耐性 知識・技術・態度
  • 隔離による予防策を理解し、一般的な医療関連感染とその危険因子を知り、経験的な抗生物質を選択するために病院のアンチバイオグラムを使用する知識があ
    る。
  • 指定された感染管理を一貫して遂行し、手技中の手指衛生などの予防技術がある。ハイリスク感染症患者の隔離予防策を計画する技術がある。抗生物質や感染管理責任者を活用することができる。
  • 院内感染の原因となる手技を避ける。感染の可能性が高いデバイスがあれば取り外し、利用可能な代替手段が安全で効果的であればそれに取り換える。感染管理プロトコルを計画・実施・研究する集学的チームを導き、調整し、参画する態度がある。

となっています。

EPAは2つだけです。

f:id:MOura:20190710210638j:plain

院内感染 EPA

EPA4 健康を改善し、病気や怪我のリスクファクターを是正し、治療可能な早期に病気を発見する予防的ケアを提供する

EPA16 個人、家族、集団のケアにデータを最適化して活用できる

追加資料はCenters for Disease Controlの評価ツールキットAHRQの感染コントロールの取り組みをリンクしておきます。

 

Quality improvement 質の改善

QIはヘルスケアシステムやその制度の中で仕事をしているホスピタリストの必須の能力です。

f:id:MOura:20190710212002j:plain

質の改善 知識技術態度
  • アウトカム尺度に基づいたガイドラインやプロトコルの知識がある。同様にこれらのアウトカム尺度の施設内報告や、医療の施設内変動や品質のギャップの潜在的な寄与因子があることを認識する。組織の文化と信頼性、集学的なチームワーク、最高品質のパフォーマンスを確保するためのツールとプロトコルの役割を示すことができる。
  • ケアのばらつきを減らし、患者の安全性と満足度を高め、非効率性と不公平さに対処することを目的とした継続的で集学的な質改善の取り組みに対して、エビデンスに基づくツールを用いたデータの収集と適応の技術が必要。
  • 質改善に由来したプロトコルと実際の使用をモデル化し、エビデンスに基づいた戦略とホスピタリストの役割を網羅する態度が必要です。施設レベルまたはそれを超えた学術的なQIの継続的な参加またはリーダーシップが期待されます。

 

EPAは

f:id:MOura:20190710213345j:plain

質の改善 EPA

EPA2 様々な状況で患者や家族のためにケアができる
EPA9 急性期の病気や怪我を診断し管理できる

EPA13 入院患者のケア、退院患者のマネジメント、ケアの移行がマネジメントできる
EPA16 個人、家族、集団のケアにデータを最適化して活用できる
EPA17 患者さんと御家族の健康観とコンテキストにおいて、相互に健康を達成するための目標を設定し、健康を与える可能性が最も高いサービスを提供できる。
EPA18 患者、家族や地域社会のためにヘルスケアの目標を最適化し、格差を最小限にできる。

EPA19 多職種連携のヘルスケアチームでリーダーシップを提供できる。

追加資料 質の改善について Society of Hospital Medicine’s Center のサイトが実際のQIの取り組みの例があり非常に有用です。これだけでも紹介に値する素晴らしいページです。

脱線しますと

例えばケアの移行のところをみると、The PArTNER model guide の紹介をされています。Patient navigatorとPeer coachの介入でスムーズな退院ができるというわけです。

あるいはうっ血性心不全では、SHMのCHFガイドが紹介されています。(登録制)

資料が豊富で参考になります。

 

Team approach and multidisciplinary care  チームアプローチと多職種ケア

多職種ケアとは、各患者に最適なケアプランを作るためにヘルスケアシステムの様々なメンバー間の積極的なコラボレーションのことをいいます。チームメンバーも患者も同じ病院にいるため、病院という環境は多職種ケアに非常に適しています。

f:id:MOura:20190710215610j:plain

チームアプローチの知識技術態度
  • チームワークの主要な要素を理解して説明ができる。効果的なチームでのやり取りをする中で大きな障壁を列挙できる。多職種チームの構造と機能に影響を与える可能性のある組織内の側面を説明できる知識がある。
  • 技術領域は、効果的なチーム構成の決定ができる。グループの動的スキルが実演できる。評価や推奨を統合できる。効率的で効果的なチームラウンドの実施ができる。
  • 態度領域は、積極的に傾聴することができる。チームに参加する。頻繁なコミュニケーションをとる。多職種チームのすべてのメンバーと意思決定を共有できる。プロフェッショナル間のコンフリクトを解決し、相互のリスペクトを生み出す。

EPAはひとつだけ

EPA19 多職種連携のヘルスケアチームでリーダーシップを提供できる。

資料はHow-to Guide Multidisciplinary Roundsというものがあります。(登録制)

 

Transitions of care ケアの移行

  • ケアの移行とは、病院への入院、転院、サービスへの移行、ICUへの転科、自宅退院、リハビリ、ナーシングセンターに患者が移ることです。これらの移行が安全かつ効果的に行われるようにするために必要です。

f:id:MOura:20190710220838j:plain

ケアの移行 知識技術態度
  • 患者の安全を確保し、継続的なケアを維持するために、各ケア以降の間に伝達される関連する情報を定義できるような十分な知識ある。患者の移行を容易にするために利用できる補助サービスについて説明できる。
  • ケアの転移に最も効率的で信頼性が高く腎俗なコミュニケーション方法を選択し利用する能力が必要。コミュニケーションをシンプルにすることができる。紹介委から受け取った情報を含むケアプランを想起に策定することができる。
  • 患者の転帰と満足感に対するケアの転移の影響を認識することと、ケアの転移に対する多職種アプローチの大切さを認識すること、患者と家族のためにケアの転移の準備をし、他の医師とリアルタイムに対話をする態度が必要です。

EPAは

EPA13 入院患者のケア、退院患者のマネジメント、ケアの移行がマネジメントできる

のみです。

 

資料は

AHRQ’s toolkit for improving care transitions

71ページにわたる重厚なケアの移行に関する資料です。チェックリストやフローチャートとその使い方などが記載されています。

The Joint Commission’s Transitions of Care Portalというものがあります。

Podcastもあり、聞いているだけでも面白いです。

 

以上で各論を終わります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

次回予告

病院総合医研修に関するガイドラインについて

(プロフェッショナルディベロップメントについて)個人的には面白そうです。

Professional Development

Finding a job

Finding a mentor

Career networking

Useful meetings

Further Training/Fellowship

 

なお、病院総合医カリキュラムのガイドラインは次回で最終回になる予定です。

これらの記事をまとめて誤字脱字を整える予定です。お楽しみに。